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        日本のわらい話 第3話 
         
          
         
        運のいい鉄砲打ち 
       むかしむかし、あるところに、腕のいい鉄砲打ちがいました。 
 あるとき、鉄砲打ちが山へ出かけるしたくをして、家を出ようとすると、うっかり手が滑ってしまい、大切な鉄砲を石の上に落としてしまいました。 
「ああ! 鉄砲の先が曲がってしまった。・・・でもまあ、鉄砲の先が曲がっても、何か取れるだろう」 
と、そのまま曲がった鉄砲を持って、猟に出かけました。 
 鉄砲打ちが出かけた山には大きな池があり、その池にはカモがいて、あちこちで羽を休めています。 
「ひい、ふう、みい・・・」 
 数えていくと、全部で十六羽います。 
「まあ、これだけいれば、曲がった鉄砲でも一羽ぐらいは取れるだろう」 
 そう思って、鉄砲打ちは一発撃ちました。 
ズドーン! 
 すると、その鉄砲の玉はジグザグに飛んでいって、何と全部のカモに当たったあげく、岩に跳ね返って、やぶへ飛び込んでいきました。 
「こりゃあ、大漁だ! 曲がった鉄砲のおかげで、大もうけができたわい」 
 鉄砲打ちは、ジャブジャブと池に入ると、十六羽のカモを残らずつかまえて、岸にあがりました。 
 すると、ふんどしのあたりが、いやにムズムズします。 
「なんだ?」 
 ふんどしをみると、大きなウナギとナマズが三匹ずつ、中であばれていました。 
 ついでに、わらぐつの中もムズムズするので脱いでみると、中からカニやドジョウが出てきました。 
「何とも、こんな事もあるもんだな。さあ、もう帰るか」 
 鉄砲打ちが引き上げようとすると、やぶの中で、何かが暴れています。 
「何だ?」 
 見てみると、岩に跳ね返った鉄砲の玉が命中したクマが、苦し紛れに土を引っかいていました。 
 クマが引っかいて出来た穴には、おいしそうな山イモがのぞいています。 
「ほう。ついでに、これも取っていこう」 
 こうして鉄砲打ちは、山イモと、クマと、カニとドジョウと、ナマズとウナギと、十六羽のカモを背負って、山をおりていきました。 
      おしまい 
         
         
        
       
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