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7月2日の日本の昔話
  
  
  
  鬼退治
 むかしむかし、旅人がうす暗い森の中を歩いていると、きゅうにガサゴソ音がして、見るからにおっかない鬼が出てきました。
   鬼は、
  「ガハハハハ、ちょうど腹がへっとるところだったんじゃ、こりゃあうまそうな人間じゃわい」
  と、言って、旅人をつまみあげると、アングリと大きな口を開けました。
  「ま、まってくれい、命だけはお助けを」
  「いんや、まてねえ。わしは腹がへっとるで、どうしてもおめえを食うだ」
   旅人は、「もうだめじゃ」と、思いましたが、ふとそのとき名案が浮かびました。
  「鬼さん、鬼さん、それじゃあ、食われる前にひとつだけ聞かしとくれ。鬼さんは化け上手だっちゅうが、雲をつくような大きなクマになれるかい?」
  「ガハハハ、そんなもんお安いご用じゃ、よおっく見とれ」
   鬼は見るまに、とても大きなクマになってキバをむきました。
  「わかった、わかった。こりゃあすごい。けんど、いくら鬼さんでも、豆っコさみたいな小せえもんにはなれんじゃろうなあ」
  「なにをこの、わしに化けられんもんはねえ。目ン玉、皿にして見とれ!」
   鬼はおそろしいクマから、スルスルスルと小さくなって、気がついたら旅人の足元にポツンと、小さな豆がひとつころがっていました。
  「さすがは鬼さん。では、ごちそうさま」
   鬼の豆をつまみ上げた旅人は、それをポイと口に入れ、ポリポリと食べてしまいましたとさ。
おしまい