日本のとんち話 第26話
イラスト たつよ 提供 らくがきの日常
びょうぶのトラ
一休さんのとんち話 → 一休さんについて
むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
一休さんのとんちの評判を聞いて、殿さまがお城に一休さんを招き入れました。
「さっそくじゃが、そこにあるびょうぶのトラをしばりあげてくれぬか。
夜中にびょうぶから抜け出して悪い事ばかりするので、ほとほと困っておったのじゃ」
もちろん、ひょうぶに描かれた絵のトラが出てくるなんて、うそに決まっています。
しかし有名な絵描きが描いたのでしょうか、びょうぶに描かれたトラはキバをむいて、今にも襲いかかってきそうでした。
「本当に、すごいトラですね。
それでは、しばりあげてごらんにいれます。
なわを、用意してください」
「おおっ、やってくれるか」
「はい。もちろんですとも」
一休さんはそう言うと、ねじりはちまきをして腕まくりをしました。
そして家来が持ってきたなわを受け取ると、一休さんは殿さまに頼みました。
「それでは、トラをびょうぶから追い出してください。
すぐに、しばってごらんにいれます」
それを聞いた殿さまは、思わず言いました。
「何を言うか! びょうぶに描かれたトラを、追い出せるわけがなかろうが」
すると一休さんは、にっこり笑って言いました。
「それでは、びょうぶからはトラは出て来ないのですね。
それを聞いて、安心しました。
いくらわたしでも、出てこないトラをしばる事は出来ませんからね」
それを聞いて、殿さまは思わず手を叩きました。
「あっぱれ! あっぱれなとんちじゃ! ほうびをつかわすから、また来るがよいぞ」
こうして一休さんはたくさんのほうびをもらって、満足そうにお寺に帰りました。
おしまい
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