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百物語 第三十九話

ガラクタおばけ

ガラクタおばけ

 むかしむかし、坊さんが、ひとりでたびをしていました。
 ある日の夕方。
「どこか、とめてくれる家はないかな」
 あたりをみまわすと、やねのかたむいた、あれ寺が目にとまりました。
「ボロボロじゃが、やねがあるだけ、ましじゃわい」
 坊さんは、あれ寺に入っていきました。
 いろりに火をたいて、あたっているうちに、坊さんはからたがあたたまって、つい、ウトウトしはじめ、やがてグッスリとねむってしまいました。
 すると、どのくらいたってからか、だれもいないはずのとなりのざしきのほうで、にぎやかなうたがはじまりました。
 坊さんがおきだして、しょうじの穴からのぞくと、こわれたからかさや、七輪(しちりん)や、かけたおさらや、そこのぬけたひしゃくや、茶がまたちが、うたいながらおどっていました。
 ガラクタのおばけです。
 坊さんはしずかに、おきょうをとなえました。
 すると、ガラクタおばけたちはしずかになって、やみのなかにきえていってしまいました。
 つぎの朝、坊さんがとなりのざしきをしらべてみると、おし入れのなかに、ゆうべのからかさや、七輪や、おさらや、ひしゃくや、茶がまなどが、らんぼうに、ほうりこまれていました。
「よしよし、かわいそうに。わしがとむらってしんぜよう」
 坊さんは、おし入れにあった物たちを取り出して、一つ一つていねいにみがいてやると、ありがたいおきょうをあげて、ガラクタたちをなぐさめたということです。
 人に使われた物は、たましいがやどるといいます。
 手入れもせず、押し入れに入れたままにしていると、化けて出るかもしれませんよ。

おしまい

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