なみだがポロリ 日本の悲しい話 ☆福娘童話集☆ 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
福娘童話集 > ジャンル別 > 日本の悲しい話 >人食い婆と、おつなの頭
お話しの移動
・ 福娘童話集

・ ジャンル別

・ 日本の悲しい話 (全30話)

→  1話 〜 10話
→ 11話 〜 20話
→ 21話 〜 30話
- 広 告 -
 


日本の悲しい話 第30話

人食いばばあとおつなの頭

人食い婆と、おつなの頭

♪音声配信
download
音声 創作活動のサイト 『Web団 零点』

 むかしむかし、あるところに、おつなという女と、そのむこが住んでいました。
 ある日、むこは仕事で、遠くへ行くことになりました。
「なるべく早くもどってくるから、しっかり留守をたのんだぞ」
 むこが出かけたあと、おつなは一人でなわを編んでいました。
 するとそこへ見知らぬおばあさんがやってきて、おつなの編んでいるなわをいろりにくべたのです。
「なっ、何をするんだよ!」
 おつなが止めても、おばあさんは知らん顔です。
 そのうちに燃えてしまったなわの灰を、おばあさんはムシャムシャと食べはじめたではありませんか。
「・・・!」
 おつなはびっくりして逃げ出そうとしましたが、体がふるえて立ちあがることも出来ません。
「ヒッヒヒヒ、そんなら、あすの今ごろ、また来るでな」
 おばあさんは灰だらけの口でニヤリと笑い、外へ出ていきました。
 次の日、おつなはこわくて仕事も手につきません。
 おばあさんが来るころになると、カヤの実を三つぶ持って、二階のつづら(→衣服などを入れるかご)の中へかくれました。
 やがて、おばあさんがやってきました。
「おや、いないのか?」
 しばらくいろりのまわりを歩いていたおばあさんは、階段をのぼりはじめました。
 おつなは、おばあさんをおどろかそうとして、
 カチン!
と、カヤの実をかみました。
 おばあさんは、その音にハッとして足を止めます。
「はて、何の音かな?」
 それでもおばあさんは、階段をのぼってきます。
 おつなはもう一度、カヤの実を口に入れて、
 カチン!
と、かみました。
「なんだか、いやな音だね」
 でも言うだけで、足を止めようともしません。
 足音が、どんどん近づいてきます。
 おつなは、こわくてこわくて息がつまりそうです。
(おねがい! あっちへ行って!)
 おつなは思いきって最後のカヤの実をかんで鳴らしましたが、もう、おばあさんはびくともしません。
「ふふふ、におうぞ、におうぞ」
 おばあさんは二階に来て、そこら中をかぎまわりました。
(ああ、もうだめ!)
 おつながつづらの中で手を合わせたとき、がばっと、ふたが開いたのです。
「おおっ、いた、いた。今日は、お前を食いにきたよ」
 おばあさんはおつなを引きずり出すと、足からムシャムシャ食べはじめて、あっというまに、体のほとんどを食べてしまいました。
 でも不思議なことに、おつなは死なずに、まだ生きていました。
「ああ、うまかった。残りは明日にとっておこう」
 おばあさんは頭だけになったおつなを戸棚の中へしまうと、ゆっくり家を出ていきました。
 次の日の朝、そんなこととは夢にも知らないむこが、家にもどってきました。
「おつな、今帰ったぞ。・・・おい、おつな!」
 いくら呼んでも、返事がありません。
「おかしいな」
 家中をさがしても、やっぱりいません。
「それにしても、腹がへった」
 そう思って、なにげなく戸棚を開けてみると、なんとおつなの頭が棚にのっていて、うらめしそうにジッとにらんでいるのです。
「うえっ!」
 びっくりしたむこが転がるように逃げ出すと、おつなの頭がコロコロと転がってきて、むこの胸にかぶりつきました。
 むこはしかたなく、おつなの頭をかかえたまま外へ飛び出しました。
 すると、おつなの頭が言ったのです。
「お前さん、わたしをおいて逃げるつもりかい?」
「と、とんでもない! おまえは、おらのかわいい女房だ!」
「そんなら、わたしにごはんを食べさせておくれよ」
 むこはしかたなく、人に見えないようにおつなの頭をだいて宿屋へ行き、二階に部屋を取って料理を運んでもらいました。
 おぜんの前にすわったとたん、おつなの頭がおぜんの上に飛び降りて、
「さあ、食べさせておくれ」
と、口を開いたのです。
 いくらかわいい女房でも、気味が悪くてがまんできません。
「かんべんしてくれ!」
 むこは、いきなりおつなの頭におはちをかぶせて上から帯をまきつけると、そのまま階段をかけ降りて、いっきに外へ飛び出しました。
「お客さん、何事ですか?」
 おどろいた宿屋の人が追いかけようとしたら、二階からおはちをかぶせられた女の頭が転がってきます。
「お、お化け!」
 そう言ったきり、宿屋の人は気を失いました。
 おつなの頭は宿屋から転がり出て、むこを追いかけました。
「た、た、助けてくれー!」
 むこはさけびながら、必死に走り続けます。
 どこをどう走っているのか、まったくわかりません。
「お前さーん! お前さーん!」
 おつなの声が、すぐ後ろから追ってきます。
「もうだめだ!」
 はっと気がつくと、目の前に、菖蒲(しょうぶ)とヨモギのはえた草むらがありました。
 むこは夢中で、その草の中へたおれこみました。
 すると、どうでしょう。
 草むらの前まで追ってきたおつなの頭が、くやしそうに、
「くそっ! 菖蒲やヨモギさえなかったら」
と、言って、もと来た方へ転がっていったのです。
「やれやれ、助かった。それにしても、菖蒲やヨモギが魔除けになるのは本当だったんだな」
 むこは、ほっとして立ちあがりました。
 そして菖蒲とヨモギをたくさんとって帰り、家の窓や戸口にさしておくことにしたのです。
 おかげで人食い婆も、おつなの頭も、二度と家へはやってきませんでした。

 今でも五月五日に、菖蒲やヨモギを軒下にさすのは、人食い鬼や魔物を追い払うためだそうです。

おしまい

 前のページへ戻る

ジャンルの選択
・有名な話 日本 世界
・こわい話 日本 世界
・わらい話 日本 世界
・感動話 日本 世界
・とんち話 日本 世界
・悲しい話 日本 世界
・ふしぎ話 日本 世界
・恩返し話 日本 世界
・恋物語 日本 世界
福娘童話集
人気コーナー
きょうの新作昔話
未公開の童話・昔話を毎日
一話ずつ公開
おはなし きかせてね
福娘童話集をプロの声優・ナレーターが朗読
小学生童話
幼稚園から小学6年生まで、学年別の童話・昔話集
おくすり童話
読むお薬で、病気を吹き飛ばそう!

福娘の姉妹サイト

http://hukumusume.com

366日への旅
毎日の記念日・誕生花 ・有名人の誕生日と性格判断
世界60秒巡り
国旗国歌や世界遺産など、世界の国々の豆知識
子どもの病気相談所
病気検索と対応方法、症状から検索するWEB問診