なみだがポロリ 日本の悲しい話 ☆福娘童話集☆ 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
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日本の悲しい話 第30話

人食いばばあとおつなの頭

人食い婆と、おつなの頭

 むかしむかし、あるところに、おつなという女と、そのむこが住んでいました。
 ある日、むこは仕事で、遠くへ行くことになりました。
「なるべく早くもどってくるから、しっかり留守をたのんだぞ」
 むこが出かけたあと、おつなは一人でなわを編んでいました。
 するとそこへ見知らぬおばあさんがやってきて、おつなの編んでいるなわをいろりにくべたのです。
「なっ、何をするんだよ!」
 おつなが止めても、おばあさんは知らん顔です。
 そのうちに燃えてしまったなわの灰を、おばあさんはムシャムシャと食べはじめたではありませんか。
「・・・!」
 おつなはびっくりして逃げ出そうとしましたが、体がふるえて立ちあがることも出来ません。
「ヒッヒヒヒ、そんなら、あすの今ごろ、また来るでな」
 おばあさんは灰だらけの口でニヤリと笑い、外へ出ていきました。
 次の日、おつなはこわくて仕事も手につきません。
 おばあさんが来るころになると、カヤの実を三つぶ持って、二階のつづら(→衣服などを入れるかご)の中へかくれました。
 やがて、おばあさんがやってきました。
「おや、いないのか?」
 しばらくいろりのまわりを歩いていたおばあさんは、階段をのぼりはじめました。
 おつなは、おばあさんをおどろかそうとして、
 カチン!
と、カヤの実をかみました。
 おばあさんは、その音にハッとして足を止めます。
「はて、何の音かな?」
 それでもおばあさんは、階段をのぼってきます。
 おつなはもう一度、カヤの実を口に入れて、
 カチン!
と、かみました。
「なんだか、いやな音だね」
 でも言うだけで、足を止めようともしません。
 足音が、どんどん近づいてきます。
 おつなは、こわくてこわくて息がつまりそうです。
(おねがい! あっちへ行って!)
 おつなは思いきって最後のカヤの実をかんで鳴らしましたが、もう、おばあさんはびくともしません。
「ふふふ、におうぞ、におうぞ」
 おばあさんは二階に来て、そこら中をかぎまわりました。
(ああ、もうだめ!)
 おつながつづらの中で手を合わせたとき、がばっと、ふたが開いたのです。
「おおっ、いた、いた。今日は、お前を食いにきたよ」
 おばあさんはおつなを引きずり出すと、足からムシャムシャ食べはじめて、あっというまに、体のほとんどを食べてしまいました。
 でも不思議なことに、おつなは死なずに、まだ生きていました。
「ああ、うまかった。残りは明日にとっておこう」
 おばあさんは頭だけになったおつなを戸棚の中へしまうと、ゆっくり家を出ていきました。
 次の日の朝、そんなこととは夢にも知らないむこが、家にもどってきました。
「おつな、今帰ったぞ。・・・おい、おつな!」
 いくら呼んでも、返事がありません。
「おかしいな」
 家中をさがしても、やっぱりいません。
「それにしても、腹がへった」
 そう思って、なにげなく戸棚を開けてみると、なんとおつなの頭が棚にのっていて、うらめしそうにジッとにらんでいるのです。
「うえっ!」
 びっくりしたむこが転がるように逃げ出すと、おつなの頭がコロコロと転がってきて、むこの胸にかぶりつきました。
 むこはしかたなく、おつなの頭をかかえたまま外へ飛び出しました。
 すると、おつなの頭が言ったのです。
「お前さん、わたしをおいて逃げるつもりかい?」
「と、とんでもない! おまえは、おらのかわいい女房だ!」
「そんなら、わたしにごはんを食べさせておくれよ」
 むこはしかたなく、人に見えないようにおつなの頭をだいて宿屋へ行き、二階に部屋を取って料理を運んでもらいました。
 おぜんの前にすわったとたん、おつなの頭がおぜんの上に飛び降りて、
「さあ、食べさせておくれ」
と、口を開いたのです。
 いくらかわいい女房でも、気味が悪くてがまんできません。
「かんべんしてくれ!」
 むこは、いきなりおつなの頭におはちをかぶせて上から帯をまきつけると、そのまま階段をかけ降りて、いっきに外へ飛び出しました。
「お客さん、何事ですか?」
 おどろいた宿屋の人が追いかけようとしたら、二階からおはちをかぶせられた女の頭が転がってきます。
「お、お化け!」
 そう言ったきり、宿屋の人は気を失いました。
 おつなの頭は宿屋から転がり出て、むこを追いかけました。
「た、た、助けてくれー!」
 むこはさけびながら、必死に走り続けます。
 どこをどう走っているのか、まったくわかりません。
「お前さーん! お前さーん!」
 おつなの声が、すぐ後ろから追ってきます。
「もうだめだ!」
 はっと気がつくと、目の前に、菖蒲(しょうぶ)とヨモギのはえた草むらがありました。
 むこは夢中で、その草の中へたおれこみました。
 すると、どうでしょう。
 草むらの前まで追ってきたおつなの頭が、くやしそうに、
「くそっ! 菖蒲やヨモギさえなかったら」
と、言って、もと来た方へ転がっていったのです。
「やれやれ、助かった。それにしても、菖蒲やヨモギが魔除けになるのは本当だったんだな」
 むこは、ほっとして立ちあがりました。
 そして菖蒲とヨモギをたくさんとって帰り、家の窓や戸口にさしておくことにしたのです。
 おかげで人食い婆も、おつなの頭も、二度と家へはやってきませんでした。

 今でも五月五日に、菖蒲やヨモギを軒下にさすのは、人食い鬼や魔物を追い払うためだそうです。

おしまい

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