ブルブルふるえる 日本のこわい話 ☆福娘童話集☆ 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
福娘童話集 > ジャンル別 > 日本のこわい話(百物語) > 朗読 > 羅生門の鬼
お話しの移動
・ 福娘童話集

・ ジャンル別

・ 百物語の朗読

・ 日本のこわい話(百物語)

→  1話  〜  10話
→ 11話  〜  20話
→ 21話  〜  30話
→ 31話  〜  40話
→ 41話  〜  50話
→ 51話  〜  60話
→ 61話  〜  70話
→ 71話  〜  80話
→ 81話  〜  90話
→ 91話  〜 100話
- 広 告 -
 


百物語 第四十三話

羅生門の鬼

羅生門の鬼

 いまから千年いじょうもむかし。
 京の都に酒呑童子(しゅてんどうじ)という、おそろしい鬼がいました。
 大江山(おおえやま)という山にたてこもり、都へあらわれては、さんざん悪いことを重ねた鬼でしたが、この「酒呑童子」をせいぱつしたのが、あの有名な源頼光(みなもとのよりみつ)の家来の、渡辺綱(わたなべのつな)、卜部季武(うらべのすえたけ)、碓井貞光(うすいさだみつ)、坂田金時(さかたのきんとき)、の四人でした。
 この四人が山ぶしすがたに身をかえて、大江山にたてこもる酒呑童子をみごとにせいばつし、都にはもとのくらしがもどったのです。
 それからしばらくしたある夜、この四人が集まって酒をのんでいました。
 そのころ京の都では、羅生門(らしょうもん)というところに、夜な夜なおそろしい鬼があらわれ、悪さをしているといううわさです。
「おのおのがた、どう思われる?」
 リーダーの貞光(さだみつ)が言いました。
「鬼か、それはありうることじゃ」
「うん、おるかもしれんのう」
 季武(すえたけ)と金時(きんとき)は、そういってうなずきましたが、もっとも年のわかい渡辺綱(わたなべのつな)だけは、むきになって反対しました。
「まさか、鬼は大江山でぜんぶ退治したではありませんか」
「しかし、とりのこしということが、あるかもしれん」
「だが、たしかにぜんぶ退治したはず」
「まあまあ、それならいっそ、羅生門にいってたしかめてみようではないか」
 そうして、その代表に渡辺綱がえらばれました。
 なかまの三人は、渡辺綱にこんなことをいいました。
「いいか。ほんとうに羅生門へいったかどうか、しょうこに高札(こうさつ)を立ててこい」
 外は、いつのまにか生あたたかい雨がふっていました。
 その中を綱は、ウマに乗って出かけていきました。
 そのうち、遠くに羅生門が見えてきました。
 黒々とそびえたつそのすがたは、さすがにきみわるく、なんともおそろしいものでした。
 綱は羅生門に近づくと、しばらく楼門(ろうもん→二階造りの門)を見上げ、あたりに目をこらしましたが、だれもいません。
「ふん、だれもおらんじゃないか。みな、うわさを聞いてビクビクしとるな」
 綱は鼻先でわらうと、やくそくの高札を羅生門の門前にうちたてました。
《渡辺綱、やくそくによりて羅生門、門前に参上す》
 こうして、綱が高札を立てて帰ろうとした、そのとき。
 暗い柱のかげに、一人のわかい娘が立っていました。
(はて、いつのまに。・・・こんな夜ふけに、わかい娘が一人でどこへいくのじゃろう?)
 ふしぎに思った綱がたずねると、娘はこういいました。
「はい、わたしはこれから五条の父のところへもどらねばなりませぬ。でも、雨はふるわ、道はぬかるわで、こまっていたのでございます」
「ほほう、五条ならわたしの帰るほうと同じじゃ。それならいっしょに、このウマに乗っていかれるがよい」
 そういって、綱が娘に手をさしのべたとき。
「ギャハハハハハッ・・・」
 とつぜん、娘は鬼のすがたにかわったかと思うと、ものすごい力で綱の首をしめつけました。
 そして手をはなすと、あっというまに空中高くまいあがります。
「おのれ! きさまが羅生門の鬼であったか」
と、刀に手をかける綱。
「アハハハハハッ、いまさらジタバタしたって、おそいわい!」
 綱は、鬼のいっしゅんのすきをついて、そのうでめがけて切りつけました。
「えい!」
「ウギャァァァァッ!」
 綱の刀は、鬼のうでをみごとに切り落としました。
「むむっ、くそっ! 綱よ、おぼえておれ。そのうで、七日間だけきさまにあずける! その間に、かならずとりもどしにいくからな!」
 鬼はそうさけぶと、空高くまいあがっていきました。
 切り落としたその鬼のうでは、はがねのようなごつごつした太いうでで、はりのような毛が一面にはえています。
 そのうでをなかまに見せると、なかまたちは口ぐちに綱をほめたたえました。
 だが綱は、このうでを七日間、鬼から守らなければなりません。
 綱は七日のあいだ、警護(けいご)をげんじゅうにして、家にとじこもりました。
 鬼のうでは、がんじょうな木の箱に入れられ、昼も夜も綱自身がこれを見守ります。
 そうして、なにごともなく七日めをむかえました。
 七日めの夜は、月の美しい夜でした。
 その夜、一人の老婆(ろうば)が、綱の家をおとずれました。
 老婆がいうには、自分は綱のおばにあたるもので、はるばる難波(なんば→大阪)から綱をたずねてきたとのこと。
 家来たちはことわりましたが、老婆はひっしになって、
「綱に会いたい一心で、わざわざ難波からきたのじゃから、おねがいします」
 それでも中に入れないでいると、
「今夜じゅうに会わねば、またいつ会えるとも知れぬ身、どうかこのばばのねがいを聞きとどけてくだされ」
と、なきだすしまつ。
 こうして老婆は、とうとう綱のやしきに入っていきました。
「綱や。おぼえておいでかい? おばさんじゃよ。おまえを子どものころ、母親がわりに育てたおばさんじゃよ。ところでどうしたのじゃ? えらくものものしいが。なにか悪いことでもあったのか?」
 綱はそういわれても、おばさんのことを思い出せませんでしたが、それでも問われるままに、羅生門の鬼のことを話しました。
 老婆はたいそうよろこんで。
「そうかいそうかい、たとえ育ての子とはいえ、そのようなてがらを立ててくれたとはのう・・・。うれしゅうてならんわ。ところで綱や。その鬼のうでとやらを、一目だけでも見せてはくれぬか?」
 さすがに綱も、それだけはことわりました。
「あすならまだしも、今夜箱をあけるわけにはいかんのじゃ」
 すると老婆は、悲しそうな顔をしました。
「じゃが、わたしは今夜じゅうにどうしても難波に帰らねばならん。それに、たとえ鬼がきても、強い綱がおれば大丈夫だろう?」
 こういわれて、さすがの綱も気がゆるみ、
「それならば、ちょっとだけ・・・」
 綱は、子どものころ世話になったというおばさんのため、箱を開いて、中から鬼のうでをとりだしました。
「おばさん、これが鬼のうでです」
「おおっ、なんともすごいうでじゃのう。・・・どれどれ、ちょっとさわらせておくれ」
 綱が老婆に鬼のうでをさしだした、そのとき、老婆のやさしそうな顔は、あのおそろしい羅生門の鬼の顔となりました。
「ギャハハハハハッ。綱よ、よいか! 七日めの夜、このうで、しかともらったぞっ!」
「おのれっ、はかったな!」
 綱が刀をぬくのもまにあわず、鬼は空中高くまいあがります。
 そうして、しっかりと自分のうでをにぎったまま、ものすごい音といなびかりをのこして、雲の上高く消えてしまいました。

おしまい

 前のページへ戻る

ジャンルの選択
・有名な話 日本 世界
・こわい話 日本 世界
・わらい話 日本 世界
・感動話 日本 世界
・とんち話 日本 世界
・悲しい話 日本 世界
・ふしぎ話 日本 世界
・恩返し話 日本 世界
・恋物語 日本 世界
福娘童話集
人気コーナー
きょうの新作昔話
未公開の童話・昔話を毎日
一話ずつ公開
おはなし きかせてね
福娘童話集をプロの声優・ナレーターが朗読
小学生童話
幼稚園から小学6年生まで、学年別の童話・昔話集
おくすり童話
読むお薬で、病気を吹き飛ばそう!

福娘の姉妹サイト

http://hukumusume.com

366日への旅
毎日の記念日・誕生花 ・有名人の誕生日と性格判断
世界60秒巡り
国旗国歌や世界遺産など、世界の国々の豆知識
子どもの病気相談所
病気検索と対応方法、症状から検索するWEB問診