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百物語 第四十七話
二つ目のおばけ
むかしむかし、江戸の浅草(あさくさ)で、見世物小屋(みせものごや)をだしていた、伝七(でんしち)という男がいました。
あれやこれやと、いろいろやってみましたが、どうもお客が集まってきません。
「なにかうまい、だしものはないものか」
と、考えていたところ、北の国には一つ目(→詳細)小僧がいるときいて、とびあがってよろこびました。
「こいつは、二、三人、さらってきて、大もうけをしよう」
そこで、とるものもとりあえず、北の国へ旅にでかけました。
山をこえ、野をこえ、北へ北へと、いく日もいく日も歩いていくと、どうしたものか、暗い森の中にまよいこんでしまいました。
もう、日もくれかかっています。
「さあ、えらいこっちゃ。こんなところで野宿とは」
すると、どこからか歌が聞こえてきました。
耳をすませてみると、子どもの声です。
「どこで歌っているのかな?」
クマざさをおしわけ、声をたどっていくと、いました。
子どもが五、六人、わになって遊んでいます。
その子どもたちは、どれもこれも一つ目です。
(さては、ここが一つ目の国か。よーし、あの子どもをさらっていって、見世物にしてやろう)
伝七(でんしち)は、そーっと近づいていって、両手でグイと、ひっつかまえました。
とたんに、
「えーい、なにをする!」
伝七(でんしち)は、けとばされ、地面にたたきつけられてしまいました。
ヒョイと顔をあげてみると、おとなの一つ目に、グルリとまわりをとりかこまれています。
伝七はおとなの一つ目に、なわでぐるぐるまきにしばられて、
「わっしょ」
「わっしょ」
と、一つ目の村へかつがれていきました。
さて、それからまもなくのこと。
「さあ、いらっしゃい。いらっしゃい。世にもめずらしい二つ目のおばけだよ。このおばけ、なんと目が二つもあるんだ」
とうとう、伝七は一つ目の国で、見世物にされてしまったのです。
おしまい
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