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百物語 第五十四話
おんぶお化け
むかしむかし、とてもおくびょうだけど心やさしい男が山道を歩いていると、どこからともなく、こわーい声がします。
「・・・おんぶしてくれぇ〜、・・・おんぶしてくれぇ〜」
「ひっ、ひゃあー! お化けだぁっー!」
男が逃げても逃げても、お化けの声はどこまでも追いかけてきます。
「・・・おんぶしてくれぇ〜、・・・歩けなくて、・・・困ってるんだ。・・・たのむ」
「・・・・・・」
その声を聞いて、男はお化けがかわいそうになりました。
「わかった、おんぶしてほしければ、おぶされ」
すると男の背中に、お化けが、ズシン! と、のっかりました。
「おっ、おもてえ! お化けって物は、もっと軽い物だと思っていたが、まあしかたない。しっかりつかまったか? いくぞ!」
男は目をつぶって、いちもくさんに帰りました。
男はなんとか家につきましたが、背中の重いお化けは乗っかかったままです。
「もう、おろすぞ」
男がおそるおそる背中の物を下ろしてみると、なんとそれは小判がぎっしりと詰まった大きなつぼだったのです。
その時、どこからかお化けの声が聞こえました。
「ありがとう。人に使われて喜ばれる為に生まれてきたのに、もう何十年も山にすてられたままだったんだ。どうか大事に使っておくれ」
おんぶお化けの正体は、山にすてられた小判だったのです。
こうしておくびょうだけど心やさしい男は、小判を上手に使ってお金持ちになりました。
おしまい
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