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日本のわらい話 第27話
どうもと、こうも
むかし江戸の町に、『どうも』」という医者と、『こうも』という医者が住んでいました。
二人とも腕が良く、日本一の医者と言われていました。
ところが、日本一が二人もいるのは変です。
そこで二人はいつも、
「わしが、日本一の医者じゃ」
「いいや、わしが、日本一の医者よ」
と、けんかをしていました。
ある日の事、どちらが本当の日本一か、二人は腕比べをすることにしました。
まず、どうもが言いました。
「切った腕を、すぐにつなぐ事が出来るか?」
「そんな事は、たやすい事よ」
「それなら、やってみろ」
どうもが自分の腕を、刀で切り落としました。
するとこうもが、たちまちどうもの腕をつなぎました。
つないだ腕は元通りで、つないだあとが全くわかりません。
「次は、お前の番だ」
今度は、こうもが自分の腕を刀で切り落としました。
するとどうもが、すぐに腕をつなぎました。
これもつないだあとがわからないくらい、上手につないであります。
どっちも見事な腕前で、これではどちらが日本一かわかりません。
すると、こうもが言いました。
「腕をつないだくらいでは、腕比べにならん。次は首のつなぎ比べでどうじゃ?」
「よかろう。たやすい事よ」
すると、こうもがどうもの首を切って、どうもを殺してしまいました。
まわりで見物していた人々は、ビックリです。
でも、こうもは、
「みんな、おどろく事はない」
と、たちまちどうもの首をつないで生き返らせました。
「おおっ、これは見事!」
みんなは、手をたたいて感心しました。
「今度は、わしの番じゃ」
次は、どうもがこうもの首を切りました。
そしてどうもも、たちまちこうもの首を元通りにつないで生き返らせました。
どちらも見事な腕前で、なかなか勝負がつきません。
「うーん。代わりばんこでは、勝負にならん。今度は両方いっぺんに、首を切ってみてはどうじゃ? そしてはやく首をつないだ方が、勝ちじゃ」
どうもが言うと、こうもも賛成しました。
「それは、おもしろい。では、一、二、三! で、はじめるぞ」
「おおっ」
「それ、一、二、三!」
二人は一緒に、相手の首を切りました。
ところが両方一緒に首を切ってしまったので、首をつないで生き返らせてくれる人がいません。
どうする事も出来ず、二人は死んでしまいました。
それからです。
『どうもこうもできない』
と、いう言葉が出来たのは。
おしまい
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