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11月6日の日本の昔話
  
  
  
  風小僧と子どもたち
 むかしむかし、雪が降りはじめたころ。
   村外れのお堂の前で、子どもたちが遊んでいると、見たことのない男の人がフラリとやってきて、いいました。
  「クリや、カキや、ナシが、いっぱいなっておる所へ遊びに行かんか?」
   子どもたちは、おなかがすいていたので、
  「どこや、どこや。早く連れてってくれろ」
  と、大喜びでいいました。
   すると、男はおしりからしっぽのような長い物を、ズズズズッと出しました。
  「さあ、それにまたがって、落ちないようにしっかりつかまるんだ。いいか。みんなのったか?」
  「うん。のった、のった」
   子どもたちがロをそろえていうと、ゴォーッとなまあたたかい風が吹いて、あっというまに空へのぼっていきました。
   そしてほんとうに、クリや、カキや、ナシが、いっぱいなっている所へ連れていってくれたのです。
  「ほれ、ほれ。おいしい果物がいっぱいなっておるだろう」
   男はまたゴォーッとなまあたたかい風を起こして、木からたくさんの果物を落としてくれました。
   子どもたちは、大喜びです。
   そのうちに、タ方になりました。
   男は急にそわそわして、
  「うっかりしておるまに、暗くなってしもうたわ。わしは、大急ぎで行かねばならん所があるんじゃ。おまえたちは、みんなでうちへ帰りなよ」
   そういうと、たちまちなまあたたかい風を起こして、どこかへ行ってしまったのです。
   さて、こまったのは、子どもたちです。
  「おらたちの村はどこやろ?」
  「おらたちは、どっちからきたんやろ?」
  「あの山、こえてきたのとちがうか?」
   みんなで帰る道をさがしているうちに、日はとっぷりくれてしまいました。
  「うちへ帰りたいよう」
  「さむいよう。こわいよう」
   女の子は泣きながら、男の子のあとについていきます。
  「泣くな。泣くと、キツネが出てきてだまされるぞ」
   子どもたちが手をつないで、歩いていくと、向こうの暗やみの中に、ボンヤリと家の明りが見えました。
   子どもたちは喜んで、明かりの方にはしっていきました。
   家の戸をあけると、ふとったおばあさんが出てきて、
  「おまえたち、どこからきたんや?」
  「おらたち、知らないあにさんによ、なにやら長い物にのせられて、風にのってきたんや。そして、カキや、ナシを、たくさん食わしてもらったんやけど、おじさんは、おらたちを置いて、また風といっしょにどこかへ行ってしもたんや。おらたち、うちへ帰れなくなってしもたんや」
  「そうかい、そうかい。その子はな、きっとおらの息子の南風(みなみかぜ)だベ。あの子はいたずらが大好きなんだ。悪いことをしたな。おらのもうひとりの息子の北風(きたかぜ)にたのんで、おまえたちを家まで送らせよう」
   おばあさんはそういうと、
  「ほれ、起きろや。いつまでも寝ておらんで、起きるんだ」
  と、となりのへやで寝ていた息子の北風を起こしました。
   北風小僧は、ねむい目をこすりながら起きてくると、
  「ほれ、早く後ろにのれや」
  と、やっぱり同じように、おしりから長いしっぽのような物をズズズズッとのばしました。
   子どもたちがそれにまたがって背中につかまると、ゴォーッと冷たい風が吹いて、みんなは、またたくまに夜空にのぼりました。
   村では夜になっても子どもたちが帰ってこないので、みんなおおさわぎでさがしていました。
   そのとき、冷たい北風がゴォーッと吹いてきて、子どもたちが村の人の前に現れたのです。
   村の人たちは、ビックリするやら大喜びするやら。
   それを見ていた北風小僧は、
  「また、いつでも遊びにこいや」
と、言って、ゴォーッという風と共に帰って行きました。
おしまい