|
|
日本の感動話 第17話
お坊さんの贈り物
むかしむかし、空海(くうかい→詳細)という名の、旅をしながら村から村へと歩く、お坊さんがいました。
ある冬の日、宿(やど→詳細)が見つからないうちに夜が来ました。
「どこかに、とめてくれる家はないかな?」
でも、きたないお坊さんの姿を見て、とめてくれる家はありませんでした。
とうとう、雪がふってきました。
村はずれまで来ると、一軒のまずしい家がありました。
「雪にふられて困っている。今夜、ひと晩とめてくだされ」
すると中から、おばあさんが出てきて。
「あれまあ、お気の毒に。こんなところでよかったら、さあ、どうぞ」
おばあさんは、お坊さんをいろりのふちに座らせ、おわんにお湯を入れてあげました。
「食べる物もなくてのう。せめて、お湯でも飲んでください。からだがあったまりますから」
お坊さんは、両手でおわんをかかえるようにしてお湯を飲みました。
冷えきったからだが、どんどんあったかくなってきます。
「ありがとう。まるで、生き返ったようだ」
お坊さんが礼を言うと、
「あしたの朝は、きっとなにか作りますから」
おばあさんが、申しわけなさそうに頭をさげました。
するとお坊さんは、ふところから米を三粒ほど出して、
「すまんが、これでおかゆを煮てくれ」
と、いいました。
「へええ、これでおかゆを・・・」
おばあさんはビックリしましたが、言われたように、なべに三粒の米を落とし、それにたっぷりとお湯を入れ、いろりの上にのせました。
すると、どうでしょう。
なべの中には、たちまちおいしいおかゆがあふれ、グツグツと煮えはじめたのです。
「さあ、おばあさんもいっしょに食ベなされ」
そのおかゆのおいしいこと。
こんなにおいしいおかゆを食べたのは、生まれてはじめてです
「はあ、ありがたや、ありがたや」
おばあさんは、涙を流して喜びました。
そしてふしぎなことに、おかゆはいくら食ベても、ちっともなくなりません。
「ありがとうございました。きたないふとんですが、ここでやすんでください」
おばあさんは、たった一組しかないふとんにお坊さんをねかせて、自分はわらにもぐってねました。
つぎの朝。
お坊さんは、おばあさんがねているうちに起き出し、また、ふところから米を三粒ほど出して、からっぽの米びつの中ヘ落としました。
「しんせつなおばあさん、いつまでも元気でいておくれ」
そういって家を出ようとしたら、おばあさんがあわてて起きてきて、
「お坊さん、待ってください。いも汁でもつくりますから」
「ありがとう。でも、わたしはもう出かけなくてはいけない。あとで、米びつをあけるがよい」
お坊さんはそう言うと、おばあさんの家を出ていきました。
「また、きてください」
おばあさんは、雪の中のお坊さんに向かって、そっと手を合わせました。
「そういえば、米びつをあけろと、言っていたが」
おばあさんが米びつをあけてみますと、なんと、中には米がびっしりつまっているではありませんか。
そればかりか、ふしぎなことに、毎日食べても米はなくなりません。
この米のおかげで、おばあさんはいつまでも元気に暮らしたそうです。
おしまい
|
|
|