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日本のとんち話 第44話

ほうびの米俵

ほうびの米俵

 むかしむかし、彦一(ひこいち)と言う、とてもかしこい子どもがいました。

 殿さまが死んで若さまが殿さまになってから、何年かたったある日の事です。
 彦一の家に、お城から使いが来て言いました。
「殿さまが、お前にほうびをつかわすそうじゃ。城にまいるがよい」
 それを聞いて、彦一は首をひねりました。
「はて、何をくださるおつもりじゃろ?
 若さま、・・・いや殿さまは、気前(きまえ)が良いからな。
 ほうびがたくさんあると持ちきれないから、ねんのためにウシをひいていこう」
 彦一が牛をひいてお城にあがると、殿さまが言いました。
「これ、彦一。ちこうよれ。そちのとんちのかずかず、あいかわらず城でもひょうばん。おかげで、父上なきあとのこの城もほがらかじゃ。よって、ほうびをとらす」
「はーっ、ありがたき幸せにぞんじます」
「では、彦一へのほうびをもて」
 お殿さまが手をたたくと、家来が一本の刀と米俵(こめだわら)を持ってきました。
(何だ、米俵は一つか)
 どうせなら米俵をもう一俵ほしいと思った彦一は、牛の背中の片方に刀をくくりつけ、もう片方に米俵をくくりつけました。
 刀は軽いけれど米俵はズッシリと重いので、牛はバランスがとれません。
 牛は体がななめになって、うまく歩くことが出来ませんでした。
 彦一はそれを見てにんまり笑うと、わざと牛にむかって怒り出しました。
「こら! お前というやつは牛のぶんざいで、お殿さまからいただいた片方のごほうびを重んじ、もう片方をかろんずるつもりか! さあ、はやく歩かんか!」
 しかし牛はうまく歩けず、ついに座りこんでしまいました。
「はて、これはこまった。せっかくお殿さまからいただいたごほうびをなのに。ここにもう一俵の米俵があれば、牛はうまく歩けるのだが」
 彦一がわざとこまっていると、お殿さまが家来に言いつけました。
「彦一に、米俵をもう一俵つかわしてやれ。・・・やれやれ、まったく大したとんちだ」
 牛は米俵を左右につけてもらうと、今度は調子よく歩き出しました。

おしまい

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