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日本のふしぎ話 第15話

源治のタヌキ石

源治のタヌキ石
三重県の民話

 むかしむかし、百姓(ひゃくしょう)の源治(げんじ)の庭に、大きな石がありました。
 この石は大変重たいので、二、三人で力を合わせないとビクともしませんが、時には一人でも軽々と運べるという、不思議な石です。
 ある日の事、源治がこの石の上に腰をかけてひと休みしていると、その石がしゃべったのです。
「源(げん)さん、源さん、わしをこの庭にいつまでも置いておくれよ」
 それを聞いた源治は、気味がわるくなって
(こんなうす気味わるい石は河原(かわら)にでもほおってやるか、それともどこかの石と交換(こうかん)してもらおうか)
と、考えました。
 源治はとなり村の石屋(いしや)の岩八(いわはち)のところへ行って、
「岩八さん、わしの家の庭に大きな石があるが、引きとってくれんかね?」
と、いいました。
 岩八はすぐに、源治の家に行きその石を見に来ました。
「おや、一人で来たのかい? この石はとても一人や二人で持てませんよ」
と、源治がいいますと、岩八は
「どれどれ」
と、ためしに押してみると、石は簡単に動きました。
「見かけによらず軽い石だな。こんな石なら、わし一人でも大丈夫だ」
と、いって持ち上げようとすると、今度はビクともしません。
 それで三人の石屋を連れて来て、運んで行くことにしました。
「今度はもっと美しい石をかわりに持って来るから、楽しみにな」
と、いって岩八は帰って行こうとすると、その石が、
「源治の庭へ帰してくれ!」
と、大声でさけんだのです。
「ウヒャー! 石がしゃべった!」
 岩八はおどろいて、石をもとのところへ運び返したという事です。

おしまい

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