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百物語 第七十六話
丸岡城の人柱
福井県の民話
むかしむかし、丸岡城(まるおかじょう)が築城(ちくじょう→城を建てること)された時のお話です。
どうしたことか、丸岡城は何度建てかけても、城がくずれてしまって建ちませんでした。
お城を建てる責任者は、最後の方法として人柱(ひとばしら)を立てることを考えました。
そして、人柱の希望者をつのりました。
でも、自分から命を犠牲(ぎせい)にして、城の下に入る者などいるはずがありません。
ですから希望者が見つかるまで、築城は中断することになりました。
さてその頃、丸岡の城下町(じょうかまち)に、片目の女が息子と住んでいました。
女は片目のうえ体も悪いので、とてもまずしい生活をしていました。
その片日の女は、人柱のことを聞いて、
(どうせ自分は長生きできない。このまま自分が死んでしまったら、かわいい自分の息子はどうなってしまうのだろう? もし息子が幸せになるならば)
と、自分が人柱になってもよいと、奉行(ぶぎょう)に願いでました。
「私は人柱になります。そのかわりどうか、息子を武士(ぶし)に取り立ててください」
「うむ、約束しよう」
片日の女は奉行との約束を信じて、人柱になりました。
城は無事に完成しましたが、どういうわけか、息子は武士に取り立ててもらえませんでした。
それからは夏になるたびに、お城の堀(ほり)の水面いっぱいにもがしげり、毎年一回は、もをからなければなりません。
そしてその日はきまって、小雨がしとしとと降りだすのです。
「あら、いとし、片日の女の涙雨」
と、町の人々は母心をいとおしみました。
また、お城には片目の蛇が住んでいたのですが、それは片日の女の怨霊(おんりょう)だといわれています。
おしまい
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