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        日本のわらい話 第39話 
         
          
         
よっぱらったスズメ 
長崎県の民話 
       むかしむかし、あるところに、お父さんと息子がいました。 
   ある日の事、お父さんは息子に言いました。 
  「となりの国ヘスズメを持っていけば高く売れるそうだが、一度にたくさんのスズメをとる方法はないものか?」 
   すると息子は、 
  「そんなことはわけもない。酒のカスとツバキの葉っぱがあればだいじょうぶだよ」 
  と、言って、酒のカスを買いにいき、ツバキの葉っぱをかごにいっぱいつんできました。 
   それからスズメのきそうなところに葉っぱを並べて、その上に、少しずつ酒のカスをつけておきました。 
  「こうしておけば、スズメなんかすぐにつかまえられるよ」 
   二人は木のかげにかくれて、スズメが来るのを待っていました。 
   すると、チュンチュンチュンと、スズメたちが集まってきて、酒のカスを食べはじめました。 
   ところがしばらくして、スズメたちは酒のカスによっぱらってしまい、ツバキの葉っぱの上へコロリと横になったまま、動かなくなりました。 
  「なるほど、息子はたいしたものだ」 
   お父さんが感心していると、日であったまったツバキの葉っぱが、クルリンとまがって、寝ているスズメをすっぽりと包みこんでしまったのです。 
  「いまのうちだ!」 
   息子は、ほうきで葉っぱをはきよせると、俵(たわら)の中に入れました。 
  「さあ、これを売りに行けばいい」 
   お父さんはさっそく、スズメの入った俵を舟につみ、となりの国へ売りにいきました。 
  「さあさあ、よく太ったおいしいスズメだよ、買った買った」 
   お父さんの声を聞いて、大勢の人が集まってきました。 
  「まさか、死んでいるスズメじゃないだろうな」 
  「とんでもない。ほれこの通り、ゴソゴソ動いていますよ」 
  「本当だ。それなら売ってくれ」 
  「はいはい。みんなきちんと並んでください」 
   これほどスズメを買う人があるとは、お父さんも知りませんでした。 
  (全部売ったら、どのくらいのお金になるだろうか) 
  と、思うだけでうれしくなってきます。 
   ところが俵の口を開けたとたん、スズメがいっせいにとび出して、あっというまに空へとんでいきました。 
   よっぱらって寝ていたスズメは、すっかり目がさめてしまったのです。 
      おしまい 
         
         
        
       
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