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日本のわらい話 第41話
昆布買い
長崎県の民話
むかしむかし、あるところに、男の子がいました。
ある日の事、お母さんが男の子をよんで言いました。
「おみそ汁に入れるから、昆布(こんぶ)を買ってきておくれ」
「うんいいよ。昆布だね」
男の子は忘れないように、口の中で、
「昆布、昆布」
と、言いながら、歩いていきました。
すると、小さな溝(みぞ)がありました。
男の子は、
「ピントコショ」
と、言って、溝をとびこえました。
そのとたん、昆布がピントコショにかわってしまいました。
「ピントコショ、ピントコショ」
と、言いながら、男の子は昆布を売っているお店へいきました。
「ピントコショおくれ」
「なに、ピントコショだって? さて、そんなもの聞いたことがないな。いい子だから、もう一度お家に帰って聞いておいで」
男の子は、また、
「ピントコショ、ピントコショ」
と、言いながら、うちへ帰ってきました。
「お母さん、ピントコショないよ」
「バカだね、この子は。そんなものあるわけがないだろう。ピントコショじゃなくて昆布だよ。昆布」
「そうか、昆布だったのか」
男の子は、口の中で、
「昆布、昆布」
と、言いながら、お店のほうへ歩いていきました。
ところがまた、溝をとびこえるとき、
「ピントコショ」
と、言ってしまいました。
「ピントコショおくれ」
それを聞いたお店の人は、あきれた顔で言いました。
「さっきも言ったが、ピントコショじゃわからんだろう」
男の子は、またまた、
「ピントコショ、ピントコショ」
と、言いながら、うちへ帰ってきました。
「やっぱり、ピントコショはないよ」
「ああ、本当にダメな子だねえ。昆布ぐらい言えなくてどうするの!」
お母さんは腹を立てて、男の子の頭をげんこつでなぐりつけました。
するとポコンと、たんこぶが出来ました。
「昆布! 昆布! 昆布! さあ、言ってみな!」
「昆布、昆布、昆布」
男の子は、頭のこぶをおさえながら言いました。
「ちゃんと言えるじゃないの。さあ、もう一度いっておいで」
男の子は、
「昆布、昆布」
と、言いながら、さっきの溝のところまできました。
「そうだ、ここを飛ぶときに、ピントコショと言うからいけないんだ」
そして溝を飛ばずに、ゆっくりと渡ると、
「やったー。ピントコショと言わなかったぞ」
と、言ったとたん、またまた昆布がピントコショにかわってしまいました。
「ピントコショ、ピントコショ」
男の子はお店にやってくると、いいました。
「ピントコショおくれ」
「ああ、やっぱりだめだ。こっちはいそがしくて、とてもお前の相手はしておれん。とっとと帰っておくれ」
そう言って、お店の人がふと男の子の頭を見ると、大きなたんこぶができています。
「どうした、そのこぶは?」
すると男の子は、ニッコリ笑って、
「ああ、そのこぶ(昆布)を買いにきた」
と、言いました。
おしまい
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