みんながドキドキ 日本の恋物語 ☆福娘童話集☆ 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
福娘童話集 > ジャンル別 > 日本の恋物語 > 牡丹灯籠(ぼたんどうろう)
お話しの移動
・ 福娘童話集

・ ジャンル別

・ 日本の恋物語 (全10話)

→  1話 〜 10話
- 広 告 -
 


日本の恋物語 第9話

ぼたんどうろう

牡丹灯籠(ぼたんどうろう)
京都府の民話

♪音声配信
download
音声 創作活動のサイト 『Web団 零点』

 むかしむかし、京の都の五条京極(ごじょうきょうごく)に、荻原新之丞(おぎわらしんのじょう)という男がすんでいました。
 まだ若い奥さんに死なれたため、毎日がさびしくてたまらず、お経をよんだり歌をつくったりして、外へも出ないで暮らしていました。
 七月の十五夜の日の事、夜もふけて道ゆく人もいなくなったころ、二十才くらいの美しい女の人が、十才あまりの娘をつれて通りかかりました。
 その娘には、ぼたんの花の灯籠(とうろう→あかりをともす器具)を持たせています。
 新之丞(しんのじょう)は、美しい女の人に心をひかれて、
(ああ、天の乙女(おとめ)が、地におりてきたのだろうか)
と、つい家を飛び出しました。
 新之丞が声をかけると、女はいいました。
「たとえ月夜でも、かえる道はおそろしくてなりません。どうかわたくしを、送ってくださいますか?」
「ええ。でも、よろしければ、わが家へきて、ひと晩おとまりなさい。遠慮はいりませぬ。さあ、どうぞ」
 そういって新之丞は女の手をとり、家へつれてもどりました。
 新之丞が歌をよむと、女もすぐにみごとな歌でかえすので、新之丞はうれしくてたまりません。
(美しいだけでなく、教養もあるとは。実に素晴らしい)
 すっかりしたしくなって、時がたつのもわすれるうちに、東の空が明るくなりかけました。
「人目もありますので、今日はこれで」
 女はいそいそとかえっていきましたが、それからというもの、女は日がくれると必ずたずねてきました。
 ぼたんの花の灯籠を、いつも娘に持たせて。
 新之丞は、毎日、女が来るのが楽しみでなりません。
 そして、二十日あまりが過ぎました。
 たまたま家のとなりに、物知りなおじいさんが住んでいました。
「はて、新之丞のところは一人きりのはずだが、毎晩若い女の声がしておる。うむ、・・・どうもあやしい」
 おじいさんはその夜、かべのすきまから新之丞の家の中をのぞきました。
 すると新之丞があかりのそばで、頭から足の先までそろった白いガイコツと、さしむかいで座っているのです。
 新之丞が何かしゃべると、ガイコツがうなずきます。
 手やうでの骨も、ちゃんと動かします。
 そのうえガイコツは口のあたりから声を出して、しきりに話をしているのでした。
 あくる朝、おじいさんは新之丞の所へ行き、たずねました。
「そなたのところへ、夜ごとに女の客があるらしいが、いったい何者じゃ?」
「そっ、それは・・・・・・」
 新之丞は、答えません。
 それでおじいさんは、昨夜見たとおりのことを話したうえで、
「近いうち、そなたの身にきっとわざわいがおこりますぞ。死んで幽霊となりまよい歩いているものと、あのようにつきおうておったら、精(せい)をすいつくされて、悪い病気にむしばまれる」
 これには新之丞もおどろいて、今までの事をありのままにうちあけたのでした。
「さようであったか。その女が万寿寺(まんじゅじ)のそばに住んでおるというたのなら、行って探してみなされ」
「はい、わかりました」
 新之丞はさっそく五条(ごじょう)から西へ、万里小路(までのこうじ)まで行って探しました。
 しかし一人として、それらしい女を知る人がありません。
 日がしずむころ、万寿寺(まんじゅじ)の境内(けいだい)へ入って休み、北の方へ足をむけると、死者のなきがらをおさめた、たまや(→たましいをまつるお堂)が一つ、目にとまりました。
 古びたたまやで、よく見たところ、棺のふたにだれそれの息女(そくじょ→みぶんのある娘をさす言葉)なになにと、戒名(かいみょう→死者につける名前)が書きつけてありました。
 棺のわきに、おとぎぼうこ(→頭身を白い絹で小児の形に作り、黒い糸を髪として、左右に分け前方に垂らした人形)、とよばれる子どもの人形が一つ、また棺の前には、ぼたんの花の灯籠がかかっていました。
「おお、まちがいなくこれじゃ。このおとぎぼうこが娘に化けていたのだな」
 新之丞はこわくなって、走って逃げ帰りました。
 家へ戻ったものの、夜にまた来るかと思うと、おそろしくてたまりませんので、となりのおじいさんの家にとめてもらいました。
 それからおじいさんに教わって東寺(とうじ)へいき、そこの修験者(しゅげんじゃ→山で修行する人)にわけをうちあけて、
「わたくしは、どうしたらよいのですか?」
と、たずねました。
 すると、
「まちがいなく、新之丞殿は化け物に精をすいとられておられますな。あと十日も、今まで通りにしておったら、命もなくなりましょう」
 修験者はそういって、まじないのお札を書いてくれました。
 そのお札を家の門にはりつけたところ、美しい女も、灯籠を持った娘も、二度と姿を見せなくなったのです。
 それから、五十日ほどが過ぎました。
 新之丞は東寺へでかけて、今日までぶじに過ごせたお礼をしました。
 その日の夜、お供の男を一人つれていたので、東寺を出てお酒を飲みましたが、お酒を飲むと、むしょうに女に会いたくなって、お供の男が止めるのも聞かず、万寿寺(まんじゅじ)へ出かけていったのです。
 万寿寺に着くと、あの女が現れ、
「毎晩、お会いしましょうと、あれほどかたくお約束をしましたのに、あなたさまのお気持ちがかわってしまい、それに、東寺の修験者にも邪魔をされて、本当にさみしゅうございました。・・・でも、あなたさまは来てくだされました。お目にかかれて、本当にうれしゅうございます。さあ、どうぞこちらへ」
「うむ、そなたにつらい思いをさせるとは、まことにすまん事をした。そなたが何者でも構わぬ。これからは、二度と離れぬ」
「・・・うれしい」
 新之丞は女に手を取られて、そのまま奥の方へ連れて行かれました。
 後をつけてきたおともの男は、腰を抜かすほどビックリして、
「た、たっ、大変だ! 新之丞さまが、あの女にさそいこまれて、寺の墓地の方へ!」
と、となり近所にいってまわりました。
 それで大さわぎになり、みんなして万寿寺の北側の、たまやがある所へ行ってみました。
 しかし新之丞は棺の中へひきこまれて、白骨の上へ重なるようにして死んでいました。
 女に精を吸い取られて、新之丞は老人のようにやつれていましたが、その口には笑みが浮かんでいました。
 万寿寺では気味悪くおもって、そのたまやを別の場所へ移しました。
 しばらくして、雨がふる夜には新之丞と若い女が、ぼたんの花の灯籠を持った娘とともに京の町を歩く姿が見られ、それを見た者は重い病気にかかるとうわさが立ちました。
 新之丞の親類(しんるい)の人たちが手厚く供養(くよう)をしましたが、たましいがまよい歩かないようになるまでには、かなりの時間がかかったという事です。

おしまい

 前のページへ戻る

ジャンルの選択
・有名な話 日本 世界
・こわい話 日本 世界
・わらい話 日本 世界
・感動話 日本 世界
・とんち話 日本 世界
・悲しい話 日本 世界
・ふしぎ話 日本 世界
・恩返し話 日本 世界
・恋物語 日本 世界
福娘童話集
人気コーナー
きょうの新作昔話
未公開の童話・昔話を毎日
一話ずつ公開
おはなし きかせてね
福娘童話集をプロの声優・ナレーターが朗読
小学生童話
幼稚園から小学6年生まで、学年別の童話・昔話集
おくすり童話
読むお薬で、病気を吹き飛ばそう!

福娘の姉妹サイト

http://hukumusume.com

366日への旅
毎日の記念日・誕生花 ・有名人の誕生日と性格判断
世界60秒巡り
国旗国歌や世界遺産など、世界の国々の豆知識
子どもの病気相談所
病気検索と対応方法、症状から検索するWEB問診