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百物語 第九十三話

ならず者と白いヘビ

ならず者と白いヘビ
千葉県の民話

 むかしむかし、ある小さな里に、長さが一メートルほどの白いヘビが二匹でてきました。
 二匹の白いヘビは人をおそれるようなことも、人に悪さをするようなこともありませんでした。
 二匹は毎日のように、仲よく里の中をはいずっていました。
「このヘビたちは、つがい(→夫婦)かのう。とても仲がよい。二匹ともまっ白とは、ほんにめずらしい」
「白いヘビは神さまの使いだというぞ。それが一度に二匹も現れたんじゃ。この里に何かいいことがあるかもしれんな」
 里の人たちは、とつぜん現れた白いヘビを、そっとしておいてやりました。
 ところがこの里には、八郎次(はちろうじ)というならず者がいました。
 自分には何もこわいものはないと、いつも強がりをいっています。
 八郎次は白いヘビの話を耳にすると、みんなの見ている前で二匹のヘビをつかみあげて、たたき殺してしまったのです。
「ヘビが何をしたというんじゃ! 何もせんのに、殺すことはなかろう」
 お百姓(ひゃくしょう)の一人がいうと、
「ふん! 殺すのはかってだろう。目玉の赤い白いヘビなど、気持ちわるくてしょうがねえ」
「白いヘビはな、神さまのつかいだ。たたりがあったらどうする!」
「なにがたたりじゃ。そんなもんはこわくない」
 朝から酔っぱらっている八郎次は、そのまま家に帰っていきました。
 その夜の事です。
 八郎次の顔は、まるで皮をむいたトウガン(ウリの一種)のように、まっ白にふくれあがってしまったのです。
 顔ばかりではありません。
 手も足も、体中が白くなってふくれあがり、はげしい痛みにおそわれたのです。
 八郎次は家から飛び出すと、
「痛え! 痛えよう! 助けてくれー!」
と、さけびながら、里じゅうを走りまわりました。
 そして三日三晩苦しみぬいて、やぶの中で死んでしまいました。

おしまい

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