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日本のとんち話 第29話
ひるごはんのただ食い
高知県の民話
むかしむかし、たいさくという、とんちの名人がいました。
ある日の事、たいさくは山へ仕事に出かけましたが、お昼になってお弁当を忘れてきたことに気がつきました。
「しまったなあ。なんとか、ただで昼ごはんを食べることはできないだろうか?」
と、考えていたら、ちょうど一軒のお百姓(ひゃくしょう)さんの家がありました。
うまいぐあいにおかみさんが一人でいて、昼ごはんの用意をしているところです。
「しめしめ、あそこで、ごちそうになろとするか」
たいさくは、いかにもこまったような顔で、家の中に入っていきました。
「すまんが、ちょっとごはんを食べさせてくれんか。さっき弁当を食べたら、魚のほねがのどにささって、いたくてかなわん。ごはんをのみこめば、なおると思うので」
「そりゃ、お気の毒に」
おかみさんは、お茶わんにごはんを入れて持ってきました。
「いやあ、もうしわけない」
たいさくはお茶わんのごはんを口にほおばると、ゴクリとかまずにのみこみました。
「どう? ほねはとれたかい?」
おかみさんが言いましたが、たいさくは首を横に振って、
「いいや、まだとれない」
そこでおかみさんは、またお茶わんにごはんを入れてきました。
たいさくは首をかしげながら、そのごはんをのみこんだり、かんだりしました。
何ばいもおかわりしているうちに、やっとおなかがいっぱいになりました。
そのとたん、たいさくさんが言いました。
「とれた、とれた。いや、すまんかったのう」
たいさくは、ニコニコしてお礼を言うと、
「いやあ、食った食った。ただのごはんはうまいなあ」
と、おなかをさすりながら山へもどって行ったのです。
おしまい
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