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日本の有名な話 第34話
バケモノをたいじしたネコ
富山県の民話
むかしむかし、あるところに、ネコの絵をかくのがとても上手な子どもがいました。
ねむっているネコ、遊んでいるネコ、ごはんを食べているネコと、どのネコの絵も本物そっくりで、大人の絵かきもかなわないほどでした。
ある時、子どもは何を思ったのか、
「おら、ネコの絵をかきながら旅をしてくる」
と、言って、絵の具ばこをかついで家を出ていきました。
子どもはお金がなくなると、ネコの絵をかいて売り、それでごはんを食べたり、宿屋にとまったりしました。
ところがある日、さびしい村はずれまできた時、宿が決まらないまま日がくれてしまいました。
(弱ったな。どっかにとまるところはないかな?)
トボトボと歩いていると、古いお寺がありました。
まるでおばけ屋敷みたいに荒れたお寺で、だれも住んでいません。
(しかたがない。気味が悪いけど、今夜はここでとまろう)
子どもは床板のあちこちが落ちた、ほこりだらけのお堂にこしをおろしました。
むかしはりっぱなお寺だったのですが、和尚(おしょう)さんがなくなった後、おそろしいバケモノが住むようになって、お寺にとまった者はだれでも食べられてしまうといううわさがたったため、このように荒れてしまったのです。
そんな事とは知らない子どもは、お堂のかべに自分のかいたネコの絵をはると、そのままよこになってねむりこんでしまいました。
すると真夜中ごろ、まるでイヌのように大きなネズミが出てきて、子どもにかみつこうとしたのです。
そのとたん、お堂のかべにはられた絵の中からネコが次々ととびだしてきて、
「ニャオーーン!」
と、大きなネズミにかみついていきました。
でも、さすがは人食いネズミ、かみついたネコを振り払うと、ネコに向かって鉄のようなキバをむきました。
ネコたちと大ネズミのたたかいに目をさました子どもは、こわくて足が動かず、逃げることができません。
でもそのうちに、
「ギャオォォォーーー!」
と、いう大きな鳴き声とともに、大ネズミが倒れました。
そして子どもはビックリして、そのまま気を失ってしまいました。
次の朝、子どもが目をさましてみると、目の前に大ネズミが血まみれになって死んでいたのです。
(おらをたすけてくれたネコは、どこへ行ったのかな?)
子どもがあたりを見回すと、かべにはったネコの絵のネコたちがいっせいに、
「ニャーオン」
と、鳴きました。
よく見ると、どのネコの体にもひっかききずのようなあとがついています。
「お前たち、助けてくれてありがとう」
子どもはネコの絵をはずしてふところに入れると、絵の具ばこをかついでお寺を出ていきました。
そんなことがあってから、この寺には二度とバケモノが出なくなったという事です。
おしまい
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