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世界の感動話 第3話
わがままな大男
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むかしむかし、あるところに、ひろくてきれいな庭(にわ)がありました。
子どもたちは、その庭で遊ぶのが大好きです。
ある日のこと、恐ろしい声があたりにひびきました。
「わしの庭へ、勝手に入るな!」
長い間いなかった、庭の持ち主が帰ってきたのです。
持ち主は、わがままな大男でした。
「出ていけ! わしの庭はわしだけのものだ!」
どなられた子どもたちは、大あわてで庭から逃げ出しました。
大男は高いへいで庭をかこむと、大きな立て札を立てました。
《はいるな!》
かわいそうに、子どもたちは遊ぶ所がありません。
冷たくて高いヘいにもたれて、ため息をつくばかりです。
「あーあ、大男の庭は、なんてきれいで楽しかったんだろう。もうあそべないのか・・・」
さむい冬が終わって、春がきました。
けれど、大男の庭には、雪がいっぱいです。
春になったのに、いつまでたっても雪はとけません。
夏も秋も、大男の庭には、春はやってきませんでした。
ずっと、冬のままです。
「なぜ、いつまでも冬ばかりが続くんだろう?」
大男は、ひどいかぜをひいてしまいました。
ある朝、スズメが大男の庭で歌いました。
「ああ、なんていい声なんだろう。それにあたたかだ。・・・うん? なんだ、この声は」
大男は飛び起きて、庭を見ました。
庭は、すっかり春でした。
庭では、子どもたちが遊んでいます。
「大男は、きっとどこかにいったんだ」
大男が、かぜで寝ているとは知らずに、子どもたちは庭に入りこんだのです。
「キャハハハハ」
子どもたちが笑うたびに雪はとけて、花が開きました。
「そうか、わかったぞ。子どもが遊ぶから、春も夏も秋もやってくるのだ」
大男は、庭に出ていきました。
木の下にいる小さな子を、高い枝にのせてやろうと思ったのです。
みんなが木に登っているのに、その子は小さすぎて登れないのでした。
大男は小さな子を抱きあげると、そっと枝にのせました。
「ありがとう」
小さな子は、大男にキスをしました。
大男はニッコリほほえむと、子どもたちに言いました。
「聞いてくれ、子どもたち。たった今から、ここはみんなの庭だ。たくさん遊んでくれ」
大男はそう言って、高いへいをこわしました。
それから子どもたちは毎日やってきて、大男と遊ぶようになりました。
けれども、大男にキスしてくれた小さい子がくることはありませんでした。
「わしが木の枝にのせてやった、小さい男の子を連れてきておくれ。あの子に会いたいんだよ」
大男は子どもたちにたのみました。
でも、小さい子がどこにいるのか、なんという名まえなのか、だれも知りません。
何年も何年も、大男は小さい子を待ち続けました。
やがて大男は、すっかり年をとりました。
子どもと遊ぶ力も、なくなってしまいました。
そして、冬になりました。
大男の庭は、雪と氷につつまれています。
でも、大男は寒いとも冷たいとも思いません。
もうすぐ、春がくることを知っていたからです。
ある朝、目をさました大男はさけびました。
「あの子だ!」
まっ白い花がさいている木の下に、あの小さい男の子がいました。
大男は、急いで庭に出ていきました。
「きてくれるのを、ずっと待っていたんだよ。ずっとずっと、会いたかった」
大男は小さな子を、しっかりと抱きしめます。
小さい男の子は、ニッコリほほえむと、
「いつかは、あなたの庭で遊ばせてくれてありがとう。きょうはぼくが、あなたを連れていってあげるよ。天の上にあるぼくの庭へ」
そういって、あのときと同じように、大男にキスをしました。
タ方、やってきた子どもたちは、死んでいる大男を見つけました。
白い花に包まれた大男は、ニッコリほほえんでいました。
おしまい
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