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2月14日の世界の昔話

マメ子と魔物

マメ子と魔物
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 むかしむかし、あるところに、お百姓(ひゃくしょう)の夫婦(ふうふ)が住んでいました。
 二人はとっても仲のよい夫婦でしたが、ただ悲しいことに、子どもが一人もありません。
 ある日、お百姓のおかみさんは、マメをいれたナベをかまどにかけました。
 そのとき、マメが一粒こぼれおちましたが、おかみさんは気がつきませんでした。
 そこへ、近所のおかみさんたちがやってきて、
「これから娘たちを、畑ヘ落ちぼひろい(→収穫のあとに取り残した作物をひろいに行くこと)にやるところですよ。おたくの娘さんもいかせたら?」
と、さそいました。
 おかみさんは腹をたてて、
「まあ、人をからかうつもりなの。うちに子どもがいないのを知っているくせに!」
と、いいました。
 ところがとつぜん、かまどのかげから小さな声が聞こえてきました。
「お母さん。あたしがここにいるじゃありませんか。あたし、みんなといっしょにいきたいわ」
 おかみさんはビックリして、かまどのうしろをのぞきました。
 見ると、マメのように小さな女の子が、ニコニコと笑っています。
 おかみさんは大喜びで、女の子をだきあげました。
 マメからうまれた女の子は、マメ子という名まえをつけてもらいました。
 マメ子は、みんなといっしょに畑へいきました。
 女の子たちはせっせと、ムギの落ちぼをひろい集めました。
 やがて、森のむこうに日がしずみかけました。
 女の子たちは、帰るしたくをはじめました。
 ところがマメ子は、帰るのをいやがりました。
「もうちょっといましょうよ。ちっとも遊ばないで帰るなんて、つまらないわ」
「じゃあ、ちょっとだけ遊ぶならいいわ」
 女の子たちは、すこしだけ遊ぶつもりでした。
 ところが気がついてみると、いつのまにか日はとっぷりくれて、あたりはまっくらになっていました。
 さあ、たいへんです。
 大いそぎで、帰らなくてはなりません。
 と、いうのも、森にはおそろしい魔物が住んでいるからです。
 女の子たちは、あわてて帰ろうとしました。
 けれど、そのときにはもう、魔物は森の入り口でみんなをまちかまえていました。
「ほほう、こりゃすごい。うまそうなのがやってくるぞ。こんやはひさしぶりに、腹いっぱいごちそうにありつけるな」
 魔物は女の子たちに近づいて、やさしそうに声をかけました。
「こんなにくらくなるまで遊んでいたのかね。いけないねえ。オオカミにくわれてしまうよ。これから帰るのはむりだから、わしの家ヘきてとまりなさい」
 しかたがありません。
 女の子たちはおそるおそる、魔物のあとについていきました。
 魔物は、女の子たちを自分の家ヘつれていくと、さっそくねかせました。
 しばらくたって魔物は、
「もう、みんなねむったかね?」
と、声をかけました。
「ねむってないわ。おきてるわ」
と、マメ子は大声でさけびました。
「どうして、ねむらないんだね?」
「だって、うちではまい晩、ねむるまえにケーキとタマゴやきをたべていたんですもの。たベないとねむれないわ」
 魔物はしかたなく、ケーキとタマゴやきをつくりました。
「みんなおきて! ごはんをたべましょう」
 マメ子がさけぶと、女の子たちはとびおきました。
 そしてケーキとタマゴやきをたべると、またねむってしまいました。
 けれどもマメ子は、ねむりませんでした。
 またしばらくたって、魔物は声をかけました。
「もう、みんなねむったかね?」
「みんなは、ねむってるわ。でも、あたしはおきてるわ」
と、マメ子はこたえました。
「おまえは、どうしてねむらないんだ?」
「だって、うちではまい晩、夕ごはんのあとでお水をもらうんですもの。それもただのお水じゃなくて、スイショウ山のむこうの、光の海からくんできたお水よ。ひしゃくじゃなくて、ザルでくんできたお水よ」
「なんて、わがままな娘だろう。かってなことばかりいってやがる」
 魔物はしかたなく、ザルを持って、はるばるスイショウ山のむこうの光の海へ、水をくみにいきました。
 そのあいだに、夜があけてきました。
 マメ子は女の子たちをおこして、大いそぎでにげだしました。
 ところがマメ子は、自分のひろった落ちぼを魔物のところにわすれてきてしまいました。
「みんな先にいっててね。あたし、すぐ帰ってくるから」
 マメ子は魔物の家へ、落ちぼをとりにもどりました。
 魔物はすでに帰っており、マメ子をつかまえて袋に入れると、マメ子をおしおきでビシバシたたくために、木の枝をさがしにいきました。
 でも、かしこくてすばしっこいマメ子は、袋に穴をあけて、外にぬけだしました。
 そして、魔物の家のネコを袋にいれると、自分はへやのすみにかくれました。
 木の枝をひろってきた魔物は、袋をビシッとうちました。
「ニャーオン!」
 ビックリしたネコが、なき声をあげます。
「こいつめ。こんどはネコのまねをするのか。もうだまされんぞ!」
 魔物は、なんどもなんども袋をたたきました。
 すると袋がやぶれて、中からほんとうのネコがころがりでました。
 さあ、魔物のおこったこと。
 すみにかくれていたマメ子は、またつかまってしまいました。
「こいつめ。もうかんべんならん。たったいまたべてやる。あらわなくてもかまわん。そのままたべてやる。さあ、はやくいえ。おまえのたべかたは、どんなのが一番うまいんだ」
 マメ子は、落ちついた口調でいいました。
「とってもおいしいたべかたがあるわ。まず、かまどにまきをいっぱいもやすの。そしてケーキをやくの。できたてのケーキのあいだに、あたしをチーズみたいにはさんでたべれば、すてきにおいしいわよ」
「よし、そのとおりにしてくってやる。できたてのケーキのあいだにはさんでくってやる」
 魔物はさっそく、かまどに火をおこして、まきをどんどんもやしました。
 そして粉をねって、こねると、たいらにのばしました。
「さあ、これでよし」
 魔物はねり粉を、かまどにかけようとしてかがみこみました。
「いまだ! えい!」
 そのときをまっていたマメ子は、ありったけの力をだして、魔物をかまどの中ヘおしこみました。
「ウギャーーー!」
 魔物は、たちまち焼け死んでしまいました。
 魔物をやっつけたマメ子は、落ちぼをいれた袋を持って、うちへ帰りました。

おしまい

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