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世界の有名な話 第14話
赤い靴
アンデルセン童話 → アンデルセン童話の詳細
むかしむかし、あるところに、カーレンという、かわいらしい女の子がいました。
カーレンは、お母さんと二人ですんでいましたが、ある時、お母さんが病気でなくなってしまいました。
お葬式の日、一人ぼっちになったカーレンがないていると、お金持ちのおばあさんが、馬車(ばしゃ)で通りかかりました。
おばあさんはカーレンをかわいそうに思って、牧師(ぼくし)さんにいいました。
「どうか、わたしに、その子の世話をさせてくださいませんか」
こうしてカーレンは、おばあさんの家でくらすことになりました。
それからカーレンは、勉強をしたり、おさいほうをならったりしながら、楽しくくらしました。
むかしの貧乏なくらしが、まるでうそのような、すてきな毎日です。
ある日、女王さまがお姫さまをつれて、町へおいでになりました。
カーレンは家のまえに出て、その行列を見ました。
お姫さまは、きれいな服を着て、目のさめるような、美しいまっ赤な靴をはいていました。
カーレンは、そのまっ赤な靴の美しさを、わすれることができませんでした。
それから、何年かたちました。
カーレンも、そろそろ、おとなの仲間入りをする年です。
ある時カーレンは靴屋の店先で、お姫さまの靴と、そっくりな赤い靴を見つけました。
(いいなあ、あの靴がほしいなあ)
カーレンが、その靴をほしがっていることがわかったので、おばあさんは、その靴をカーレンに買ってやりました。
「まあ、すてきな靴をありがとう。これをはいて、教会へいってみたいわ」
それを聞いたおばあさんは、カーレンに注意しました。
「カーレン。教会は黒い靴をはいていくものです。赤い靴をはいていってはいけませんよ」
「・・・はい」
けれどカーレンは、そのいいつけをききませんでした。
おばあさんが重い病気にかかって、ねこんでしまうと、いつもいつも、赤い靴をはいて教会へいきました。
教会では大勢の人たちが、うらやましそうに自分の靴を見ているように思えて、とてもうれしくなりました。
(みんな、わたしの靴を見ている。うふふふふふっ)
ある日、カーレンは、ダンスパーティーにまねかれました。
パーティーにいきたいカーレンは、苦しそうにねているおばあさんのかんびょうもしないで、おしゃれに夢中になりました。
そして赤い靴をはいて、パーティーに出かけようとしました。
ところが歩き出したとたん、たいへんなことがおこりました。
足がひとりでに動き出して、ダンスをおどり出したのです。
「わあ、とまらない、とまらないわ!」
やめようと思っても、自分ではどうにもなりません。
まるで靴のいうなりになってしまったように、外へおどり出したのです。
カーレンは、おどりながら町を出て、とうとう暗い森の中へ入っていきました。
すると木かげに、赤いひげをはやした気味の悪い魔法使いのおじいさんがたっていて、
「ほほう、なんときれいなダンス靴だ」
と、いうと、カーレンのおどりは、いよいよはげしくなりました。
そしてそれから、カーレンは昼も夜も、晴れた日も雨の日も、森や野原をおどりつづけました。
何日すぎたでしょうか。
もうフラフラになって、もといた家のそばまでおどりながらきた時、カーレンは、おばあさんのお葬式にであいました。
カーレンは、むねがはりさけそうになって、なき出しました。
あのやさしかったおばあさんが死んでしまったのは、自分のせいだと思ったからです。
「ああ、おばあさん、ごめんなさい。・・・神さま、どうか、どうかこのおろかなわたしを、おゆるしください」
カーレンの心は、おばあさんへのおわびの気持ちでいっぱいになりました。
その時、あたりにサーッと、まばゆい光がさしてきました。
そして光の中に、まっ白い服をきた天使(てんし)がたっていて、カーレンにほほえみました。
すると、あの赤い靴がカーレンの足からぬげて、カーレンのおどりがようやく終わりました。
おしまい
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