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世界の有名な話 第13話
ピーター・パン
バリの童話
ある日の夜、とつぜんウェンディーのへやのまどから、男の子が飛びこんできました。
「あなたは、だあれ?」
「ぼくはピーター・パン。夢の国ネバーランドからむかえにきたんだ。さあ、いっしょにぼうけんに出かけよう」
いっしょにいた弟のジョンとマイケルも、ぼうけんと聞いて大喜びです。
「ネバーランドって、どうやっていくの?」
「飛んでいくんだ。妖精(ようせい)のティン力ー・ベルの羽の粉をつけると、空を飛ベるんだよ」
「わあ、ほんとうだ。すごーい!」
「ネバーランドは、二つめの角を曲がって、あとは、どこまでもまっすぐのところさ」
空高く飛んでいくみんなの目には、家がおもちゃのように小さく見えます。
いくつもの夜が過ぎ、いくつもの朝がきました。
とつぜん、ピーターがさけびました。
「みてごらん、あれがネバーランドだ。あの黒い船は、海賊船だよ。そしてあそこにいるのが、恐ろしいフック船長。むかし、フックは腕と時計をワニに飲みこまれたんだ。だからチクタク音をたててワニが出てくると、まっさおになって逃げ出すよ。アハハ」
島では、子どもたちが待っていました。
「ピーター、お帰りなさい。・・・あれ、この人は、だあれ?」
子どもたちがかけ寄ると、ピーターはいいました。
「ウェンディーだよ。ぼくたちのお母さんになってくれるんだ」
ピーターの家は、地面の下にあります。
せまいけれど、あたたかくて、すてきなところです。
たっぷり遊んでつかれると、ウェンディーお母さんが、おやすみ前のお話しをしてくれます。
昼間は、湖や森の探検です。
でも、海賊船が、いつも遠くからながめています。
それはフック船長が、子どもたちをねらっているからです。
ある日、ウェンディーが言いました。
「パパとママに会いたいな。おうちに帰りたい」
「フン! 帰りたいなら、勝手にすればいい!」
ピーターはすねて、どこかへ飛んでいってしまいました。
「ウェンディー、いっちゃ、いやだ!」
子どもたちが、泣きだしました。
その時、突然フック船長が現れたのです。
「フフフフフフッ。ピーターはおらんな。よし、野郎ども、子どもたちをつかまえろ!」
子どもたちは、つぎつぎにつかまってしまいました。
「大変よ、ピーター。みんながつかまったわ」
ティンカー・ベルが、大あわてで知らせました。
「よし。ワニになって、フックをおどかしてやる」
チクタク、チクタク。
ピーターは時計の音をたてながら、海に飛びこみ、泳ぎだしました。
「フフフフフフッ。もうすぐ、おまえたちは、海の底だ」
後ろ手にしばられた子どもたちを見て、フック船長はごきげんです。
と、そこにふしぎな音が。
チクタク、チクタク・・・・・・。
「ワ、ワッ、・・・ワニだあー!」
フック船長は、あわてて隠れました。
子どもたちが、こわごわ海をのぞいてみると。
「あっ!」
船にあがってきたのは、ワニではなくてピーターでした。
ピーターは、子どもたちをつぎつぎに助け出しました。
もちろん、たいせつなウェンディーも。
「うぬぬ、ワニかと思えば、おまえだったか」
おこったフック船長がピーターに飛びかかり、船の上ですさまじいたたかいがはじまりました。
身の軽いピ一ターが、短剣をビュン!
それをよけたフック船長が、バランスをくずして。
「うわああー!」
フック船長は海で大口をあけていたワニに、パクリと食べられてしまいました。
これで海賊船は、ピーターのものです。
ティンカー・ベルが妖精の粉をかけると、海賊船はフワリと空に浮かびました。
いくつもの夜が過ぎ、いくつもの朝をむかえ、船はウェンディーたちの家へと進みました。
そしてようやく家へ着くと、ウェンディーたちは、まどから子どもベやに飛びこんで、待っていたお母さんにとびつきました。
「だまって出ていって、ごめんなさい。あたしね、ピーターとぼうけんに出ていたの」
後ろをふりかえると、ピーターと海賊船は、もときたみちを帰るところでした。
飛んでいくピーターを見送りながら、ウェンディーたちは少し悲しくなりました。
そんなウェンディーたちに、ピーターは明るく手をふると、
「ぼうけんをしたいときは、いつでもよんで。すぐにむかえに行くから。では、また会おう」
ピーター・パンは、今もネバーランドに住んでいます。
いつの日か、あなたのへやにも飛んでくるかもしれませんよ。
おしまい
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