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        世界のこわい話 第9話 
         
          
         
青ひげ 
ペローの童話 → ペローの童話の詳細 
       むかしむかし、大きなおやしきに、ひとりの男の人がすんでいました。 
   この人は、お屋敷のくらの中にお金や宝石をたくさんもち、いろいろなところに別荘をもっている大金持ちです。 
   でも、青いひげがモジャモジャとはえた、とてもこわい顔をしているので、人々から『青ひげ』とよばれてきらわれていました。 
   そしてもうひとつ、青ひげには、ヘんなうわさがありました。 
   それは、今までに六人もおくさんをもらったのに、みんなどこかへいなくなってしまうという、うわさでした。 
   ある時、青ひげは近くにすむ美しい娘を、お嫁さんにしたいと考えました。 
   そこで娘とそのお母さんや兄弟たち、それに友だちもよんで、おいしいごちそうをしてもてなしました。 
   みんなは別荘にとまり、何日も何日も、散歩やダンスやつりをして、楽しくすごしました。 
   そのあいだ、青ひげはいっしょうけんめいニコニコと、やさしい顔をしていました。 
   しばらくすると、娘は青ひげのお嫁さんになってもいいと言いました。 
   青ひげは大喜びで、すぐに結婚式(けっこんしき)をあげたのです。 
   ある日、青ひげはおくさんをよんでいいました。 
  「わたしは、明日から大切な用があって旅に出かけることになった。だから、あなたにやしきのカギをあずけていこう」 
   そういって、カギのたくさんついているたばをとり出しました。 
  「これは、家具の入っているくらのカギ。これは、金や銀の食器の棚のカギ。これは、宝石箱のカギ。わたしのるすのあいだ、たいくつだったら、このやしきにいくら友だちをよんでもかまわないし、どの部屋に入ってもかまわないよ。ただし・・・」 
   青ひげは急にこわい目をして、おくさんをジロリと見ました。 
  「この小さなカギだけは、使わないように」 
  「はい。でも、これはいったいどこのカギなのですか?」 
   おくさんがたずねると、青ひげはこたえました。 
  「ろうかのつきあたりの小さな部屋のカギだ。いいな。その部屋には、ぜったいに入ってはいけないぞ」 
  「わかりました」 
   こうして青ひげは、つぎの日、出かけていきました。 
   おくさんは、はじめのうちは友だちをよんで楽しくすごしていましたが、そのうち、たいくつになってきました。 
   すると、あのいけないといわれた部屋に入りたくて、たまらなくなりました。 
  「だめ、いけないわ。 
   ・・・いけないかしら。 
   ・・・少しだけなら。 
   ・・・大丈夫よね。 
   ・・・大丈夫よ」 
   おくさんは、小さなカギで小さな部屋のドアを開けてしまいました。 
  「あっ!」 
   中を見たおくさんは、ドアのところに立ったまま、ガタガタとふるえだしました。 
   部屋のかべには、たくさんの女の人の死体がぶらさがり、ゆかには血がベッタリと、こびりついていたのです。 
   それはみんな、青ひげのまえのおくさんたちでした。 
  「ただいま」 
   そこへ、青ひげが帰ってきたのです。 
   おくさんはビックリして、カギをゆかに落としてしまいました。 
   おくさんはあわててカギをひろうと、ドアにカギをかけて青ひげのいる玄関にいきました。 
  「お、お、おかえりなさい」 
   おくさんを見た青ひげは、ニッコリ笑いました。 
  「やあ、すっかり、おそくなってしまったね。・・・おや、どうしたんだい? そんなにふるえて」 
  「い、いえ、べ、べつに」 
   ガタガタとふるえるおくさんを見た青ひげは、急にこわい顔になっていいました。 
  「わたしていたカギを、出してもらおう」 
  「はっ、はい」 
   おくさんがふるえる手で差し出したカギを見た青ひげは、キッ! と、おくさんをにらみつけました。 
   カギには、あの部屋で落としたときについた血が付いていたのです。 
  「・・・いけないといったのに、やっぱり見たんだな」 
  「ゆるしてください、ゆるしてください」 
   おくさんは青ひげのまえにひざまずいて、ないてあやまりました。 
   でも青ひげは、ゆるしてくれません。 
  「おまえは悪い女だ。・・・殺してやる!」 
  「ゆるしてください、ゆるしてください」 
  「・・・では、お祈りの時間だけまってやろう」 
  「ああ、神さま・・・」 
   おくさんは、必死で神さまにお祈りします。 
   青ひげは刀をぬくと、お祈りをしているおくさんの首をきろうとしました。 
   ちょうどその時、玄関のドアがひらいて、ふたりの男の人が入ってきました。 
   おくさんのふたりのお兄さんたちが、運よく妹をたずねてきたのです。 
   ふたりは妹が首をきられそうなのをしって、すぐに青ひげにとびかかって、殺してしまいました。 
   死んだ青ひげには、ほかに、しんせきがいなかったので、お屋敷や別荘、お金や宝石は、ぜんぶおくさんのものになりました。 
    おくさんは、それからはずっと幸せにくらしたということです。 
      おしまい 
         
         
        
       
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