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世界のとんち話 第13話
ものしり博士
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むかしむかし、クレープスという名のまずしい百姓がいました。
クレープスは二頭のウシをつかって、車にいっぱいのたきぎを町ヘはこびました。
そしてそれを二ターレルで、ある博士に売ったのです。
百姓にお金をはらうとき、博士はちょうどごはんを食ベていました。
百姓は博士がおいしいものをのんだり食べたりするのを見て、とてもうらやましくなってきました。
(博士になると、こんなにおいしいものが食べられるのか)
そこで百姓は、じぶんも博士になることができるかとたずねました。
「おお、なれるとも」
と、博士はかんたんにいいました。
「博士なんて、すぐになれるさ」
「では、どうしたらいいのかね?」
「まず、ABCの書いてある本を買いなさい。それは、表紙にオンドリの絵がかいてある本だよ。つぎに、きみの車と二頭のウシを売って、その金で服を買うんだな。それから、ほかにも博士に入り用なものをね。三番目に、『わたしはものしり博士である』と書いた看板(かんばん)をつくらせたまえ。そして、きみの家の戸口にくぎでとめるんだよ。あとはそうだな、なにをきたれてもどうどうとして、博士らしくしていればいい」
百姓は、博士からいわれたとおりにしました。
こうして百姓が博士のまねをはじめてから、いくらもたたないうちに、ある金持ちの金がぬすまれました。
みんなは金持ちに、ものしり博士の話をしました。
その人はこれこれいう村に住んでいて、きっとその金がどこにいったかを知っているにちがいありませんと。
そこで金持ちは、さっそくウマに車をつながせて、その村にでかけていきました。
そして百姓にむかって、ものしり博士かとたずねました。
「そのとおり、わたしがものしり博士です」
「では、わたしといっしょにいって、ぬすまれた金をもういちどとりもどしてください」
「よろしい。しかし、妻(つま)のグレーテもいっしょにつれていかなくてはなりません」
「ああ、いいですよ」
それからみんなは、いっしょにでかけました。
みんなが金持ちの家につくと、食事の用意ができていました。
そこでまず、いっしょにごはんを食ベることになりました。
そしてそこヘ、一番目の召使い(めしつかい)が、ごちそうのはいった大ざらをはこんできました。
すると百姓は、おかみさんをつついていいました。
「グレーテ、あれが一番目のだ」
それは、あれが一番はじめのごちそうをもってきた人だという意味だったのです。
けれども召使いのほうでは、「あれが一番目のドロボウだ」と、いっているのだと思いました。
しかも、その召使いが本物のドロボウでしたので、おそろしくなってきました。
そして、ヘやから出るとなかまにいいました。
「あの博士はなんでも知っている。まずいことになっちまったぞ。やつは、ぼくのことを一番目のだとぬかしたんだ」
そこで二番目の召使いは、ヘやに入るのがいやでたまりません。
でも、入らないわけにはいきません。
次の召使いが大ざらをもってはいってくると、百姓はおかみさんをつついていいました。
「グレーテ、あれが二番目のだ」
この召使いも、おなじようにおそろしくなってきました。
そこで、はやくへやからとびだしました。
そして、三番目の召使いが入ったときも、百姓はいいました。
「グレーテ、あれが三番目のだ」
さて、四番目の召使いは、百姓がいつ自分たちが犯人だというか、こわくてこわくてたまりません。
そこで、ものしり博士にむかって、そとまできてくれるようにと目くばせしました。
百姓がそとにでると、召使いたちは四人とも、金をぬすんだのはじぶんたちだと白状しました。
そして、
「もしあなたがつげ口さえしなければ、ぬすんだ金をそっくりかえすばかりか、たんまりお礼をします。さもなくば、わたしたちの命にかかわります」
と、いったのです。
それから四人は、百姓を金のかくしてあるところヘ案内していきました。
よろこんだものしり博士は、もういちどテープルにつきました。
そしていいました。
「ご主人。いまから本をつかって、どこに金がかくされているかさがしてみましょう」
けれども、五番目の召使いは暖炉(だんろ)にもぐりこんで、ものしり博士がもっとたくさんほかのことがわかるかどうか、きいてみようとしました。
博士はすわったまま、ABCの本をひらきました。
そして、あちこちめくってオンドリをさがしました。
でも、なかなか見つからないので、いいました。
「おまえはなかに入っている、でてきなさい」
すると暖炉のなかにいる召使いは、じぶんのことをいうのだと思いました。
そして、ひどくおどろいてとびだすと、大声でいいました。
「この人は、なんでも知っている!」
ものしり博士は、金持ちに金がどこにあるかを知らせました。
けれども、だれがぬすんだかはいいませんでした。
こうして、ものしり博士は両方からたくさんの金をお礼にもらいました。
そして、とても名高い男になったのです。
おしまい
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