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        世界の感動話 第27話 
         
          
         
ナイチンゲール 
アンデルセン童話 → アンデルセン童話の詳細 
       むかしむかし、中国の王さまのもとに、遠い国から一冊の本が送られてきました。 
   そこには、 
  《中国の王さまのご殿は、世界一すばらしい。でも、本当に一番すばらしいのは、そのお庭のナイチンゲール(なきウグイス)の声》 
  と、書かれてありました。 
  「わしの庭に住んでいるらしいナイチンゲールとやらを、今夜じゅうにさがし出してまいれ」 
   大臣と家来たちはご殿じゅうさがしましたが、どこにいるのかわかりません。 
   こまっていると、台所で働く小さい娘が、 
  「その鳥なら、毎晩、病気のかあさんに食ベ物を届けにいくとき、森の中でいい声で歌ってくれるわ」 
  と、いいました。 
   みんなは、娘を先頭にゾロゾロと森へ出かけました。 
   森の奥から、鈴をふるような、きれいな歌声がひびいてきます。 
  「しっ! あれがナイチンゲールよ」 
   娘は、枝に止まっている灰色の小鳥にいいました。 
  「王さまに、あなたの歌を聞かせてあげて」 
   娘のたのみを聞いて、ナイチンゲールはその晩、王さまのご殿にやってきました。 
   ナイチンゲールは、王さまの前で歌いました。 
   王さまは、はらはらと涙をこぼていいました。 
  「なんてすばらしいのだ。どうか、いつまでもわしのそばにいておくれ」 
   その日から、ナイチンゲールはりっぱな鳥かごをいただいて、ご殿で暮らすようになりました。 
   さて、ナイチンゲールがやっとご殿の暮らしに慣れたころ、遠い国から王さまへ贈り物が届きました。 
   それはダイヤモンドとルビーで飾られた美しい金のウグイスで、ネジを巻くと尾をふって、それはみごとに歌うのでした。 
  「金のウグイスがいれば、わしは、なにもいらぬ」 
   その王さまの言葉を聞くと、ナイチンゲールはまどからそっと飛び立って、森へ帰っていきました。 
   そうして、一年たちました。 
   ある晩、金のウグイスはブルルル、といったきり、動かなくなってしまいました。 
   王さまは医者や時計屋をよんで、なんとか金のウグイスを歌わせようとしましたが、むだでした。 
   心棒の折れたウグイスを、もとのように歌わせることなど、だれにもできなかったのです。 
   それから、五年たちました。 
   王さまは、重い病気にかかり、だれもが王さまはもう助かるまいと思っていました。 
   新しい王さまも決まり、大臣や家来たちは、新しい王さまのあとばかり追いかけて歩いていました。 
  「たのむ。もう一度歌ってくれ。金のウグイスよ」 
   病気の王さまは、ベッドの中で涙をこぼしました。 
   そのとき突然、鈴をふるような歌声がまどのそばでひびきました。 
   歌っているのは、森のナイチンゲールです。 
   王さまが苦しんでいることを知って、なぐさめにきたのです。 
   ナイチンゲールの声を聞いているうちに、王さまのからだに力がわいてきました。 
   ナイチンゲールは、声をかぎりに歌いました。 
  (もう一度、元気になって。王さま!) 
   その晩、王さまはグッスリとねむり、新しい朝がきたときには、青ざめていた冷たいほおは、バラ色にかがやいていました。 
  「ありがとう、ナイチンゲールよ。これからも、たびたび飛んできて、わたしをはげましておくれ」 
   ナイチンゲールが森へ飛んでいったあと、家来たちがヘやへ入ってきました。 
   家来たちは、てっきり王さまが亡くなったものと思って見にきたのです。 
   元気になった王さまは、ビックリする家来たちをジロリと見回して、 
  「おはよう、みなの者」 
  と、いったのです。 
      おしまい 
         
         
        
       
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