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11月5日の世界の昔話
  
  
  
  ふしぎなたいこ
  ロシアの昔話 → ロシアの国情報
  むかしむかし、エメリヤンという若者が、お百姓(ひゃくしょう)さんの家にやとわれてはたらいていました。
   ある日、草原を歩いていると、カエルがピョンと飛びだしたので、ふみそうになりました。
   でも、うまくまたいでとおりました。
   するとうしろで、だれかがエメリヤンをよびました。
   見ると、美しい娘さんです。
  「エメリヤン。わたしをお嫁にもらってちょうだいな」
   エメリヤンは娘さんが気にいったので、お嫁にもらいました。
   ある日、エメリヤンの家の前を、王さまが通りました。
   王さまは、エメリヤンとお嫁さんが仲よくしているのを見ると、いじわるをして困らせてやろうと思いました。
   そこで王さまは、エメリヤンをお城によんで、二人分の仕事をさせました。
   ところがエメリヤンは、夕方までに仕事をすませて、歌をうたいながら家へ帰りました。
   つぎの日は三人分、そのつぎの日は五人分と、どんなにたくさん仕事をさせても、エメリヤンはちゃんと仕事をしてしまいます。
  「ではあすは、お城のまわりに川をつくって、その川に舟をうかべるのだ。できなかったら、おまえの首を切ってしまうぞ!」
   王さまは、一人ではぜったいにできないことをいいつけました。
  「王さまは、わたしをいじめ殺すつもりなんだ」
  と、エメリヤンはお嫁さんにいいました。
  「まあ、心配しないで、早くおやすみなさい」
   つぎの朝、起きてみると、だれがつくったのか、お城のまわりに大きな川ができています。
   りっぱな舟も浮かんでいます。
   あとは、舟つき場の上を、たいらにならせばよいだけでした。
   王さまはそれを見ると、くやしがって、むちゃくちゃなことをいいつけました。
  「こんどは、どこかわからない所へ行って、なにかわからないものを持ってこい!」
   エメリヤンは困って、またお嫁さんにそうだんしました。
   すると、お嫁さんはいいました。
  「わたしのおばあさんの所へ行って、教えてもらいなさい」
   エメリヤンはいわれたとおり、森の中に住んでいる、おばあさんの家へ行きました。
   おばあさんは、
  「この糸巻のころがるほうへ行って、たいこをさがしだして、お城へ持って行きなさい」
  と、教えてくれました。
   エメリヤンは、糸巻のころがるほうへついて行って、たいこを見つけました。
   それをお城へ持って行くと、王さまはそれを見もしないでいいました。
  「それは、わたしのほしいものじゃない」
  「そうですか。では、たたきこわしてしまいましょう」
   エメリヤンが力いっぱいたいこをたたくと、お城の兵隊がみんな、たいこのそばに集まってきました。
   たいこをたたきながら歩いていくと、兵隊もゾロゾロとついてきます。
   兵隊をとられてしまっては、たいへんです。
  「おい、エメリヤン、やめてくれ。もうお前をいじめないから、ゆるしてくれ」
   王さまは大声でさけびましたが、エメリヤンはドンドンたいこをうちながら、川のそばまできました。
   そして、たいこをコナゴナにこわして、川の中へほうりこみました。
   すると兵隊は、バラバラに逃げてしまいました。
   それから王さまは、もうむりをいわなくなったので、エメリヤンとお嫁さんは、しあわせにくらしたということです。
おしまい