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      しゅ の ばん の ばけもの
       
           
          (にほんのむかしばなし)       
      
      
 
         
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       むかしむかし、たび の さむらい が ひとり、むらはずれ の さみしい のはら に さしかかりました。
       
 
 この あたり には、『しゅ の ばん』と よばれる ようかい が でる との うわさ です。
 
 
「ああ、ひ は くれてくるし、こころぼそい なあ。ばけもの に あわねば よいが」
 
 
 さむらい が あし を はやめる と、
 
       
      「しばらく、おまち くださらんか」
       
 
と、うしろ から、よびとめる もの が います。
 
 
 さむらい が おそるおそる ふりかえる と、そこ に いたのは じぶん と おなじ ような たび の さむらい でした。
 
 
 あみがさ を かぶって いる ので かお は わかりません が、さむらい に まちがい ありません。
 
 
「さしつかえ なければ、ごいっしょ ねがいたい のですが」
 
 
「そうですか。じつ は わし も みちづれ が ほしかった のです。
 
 
 この あたり には『しゅ の ばん』 とか いう ばけもの が でる との うわさ ですから。・・・きいた こと が ありませんか?」
 
 
 すると、あと から きた さむらい が、
 
 
「ああ、きいた こと が ありますよ。
 
 
 なんでも それは、こんな ばけもの だそうで」
 
 
と、いって、かぶっていた あみがさ を、パッ と とりました。
 
 
 すると そこから あらわれた のは、ごばん の ように かくばって いる、しゅ に そまった、まっかな かお で、
 
 
 かみのけ は まるで はりがね の ように ごつごつ しており、おおきな くち は みみ まで さけています。
 
 
 そして ひたい には、つの が はえて いました。
 
 
 これは まさしく、しゅ の ばん の ばけもの です。
 
 
 さむらい は、
 
 
「うーん!」
 
 
と、め を まわして、きぜつ してしまいました。
 
 
 そして しばらく してから、はっ と われ に かえった さむらい は、むがむちゅう で のはら を かけぬけて いき、
 
 
 やがて みえてきた いえ に とびこみました。
 
 
「おたのみ もうします!」
 
 
 すると その いえ には、おかみさん が ひとり いるだけでした。
 
 
「まあまあ、いかがなされた の ですか?」
 
 
「まず は みず を いっぱい、のませて いただきたい」
 
 
「はい、ただいま さしあげますよ」
 
 
 おかみさん は だいどころ の みずがめ の ひしゃく を とって、さむらい に わたしました。
 
 
 いっき に それ を のんだ さむらい は、おかみさん に はなしました。
 
 
「じつ は、のはら で みちづれ が できた と おもったら、しゅ の ばん の ばけもの だったのです」
 
 
「おや、それは おそろしい もの に あいましたね。
 
 
 しゅ の ばん に あうと、たましい を ぬかれる と いいますから。
 
 
 ・・・して、その しゅ の ばん と いう のは、もしや、こんな かお では ありません でしたか?」
 
 
 おかみさん は、ひょいっ と かお を あげました。
 
 
 そこに あった のは、しゅ に そまった しかくい かお に、みみ まで さけた くち に、はりがね の ような かみのけ に、ひたい の つの です。
 
 
「うーん!」
 
 
 さむらい は、またまた きぜつ してしまい、つぎ の ひ に なって われ に かえりましたが、
 
 
 しゅ の ばん に たましい を ぬかれた のか、みっかご に しんで しまった と いうことです。       
              おしまい       
        
         
        
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