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Illustration 和穗かなた 運営サイト ここあ
ラプンツェル
(グリムどうわ)
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むかしむかし、あるところに、こども の いない ふうふ が いました。
ふうふ は まいにち、かみさま に おねがいします。
「かみさま、どうか わたしたち に、こども を おさずけください」
そんな あるひ、ふたり の ねがい が かみさま に とどいて、おくさん に あかちゃん が やどったのです。
「かみさま、ありがとうございました!」
おくさん の おなか の あかちゃん は すくすく と そだち、あと は うまれるのを まつ ばかり です。
さて、この ふうふ の いえ の となり には、おおきくて きれいな にわ の いえ が あります。
この いえ の もちぬし は、ゴテル と よばれる まじょ です。
むらびとたち は まじょ が おそろしくて、だれひとり この いえ に ちかよろうとは しませんでした。
その まじょ が、おくさん の おなか に あかちゃん が やどった こと に きづいたのです。
まじょ は にわ に でる と、にわ の はたけ で そだてている レタス に まほう を かけました。
「レタスたち よ、あの みごもった おんな を ゆうわく するのだ。あの おんな が おまえたち を、どうしても たべたくなる ようにね」
すると まほう を かけられた レタス は、あわい ひかり を はなつように なりました。
ある ひ、おなか の おおきく なった おくさん が、ふと、いえ の まど から まじょ の にわ を のぞきました。
まじょ の いえ の にわ には うつくしい はなばたけ や やさいばたけ が あり、その やさいばたけ に うえられた レタス を みた おくさん は、たちまち レタス に こころ を うばわれました。
「あの レタス、なんて おいしそう なんでしょう」
おくさん は その レタス が、とても たべたく なりました。
でも、その レタス は まじょ の もの なので、かって に たべたり したら どんな こと を されるか わかりません。
「だめよ。あれ は まじょ の レタス なのだから」
おくさん は じぶん に いいきかせる と、ぐっと がまん しました。
でも、レタス の まほう に かかってしまった おくさん には、もう レタス いがい の たべもの は かんがえられません でした。
おくさん は そのひ から しょくじ を やめて、どんどん やせて いきました。
それに きづいた おっと が、おくさん に たずねます。
「おまえ、どうして なにも たべないんだ?
この いえ には、パン でも にく でも たくさん あるのに。
なに も たべない では、おまえ にも おなか の あかんぼう にも よくないよ」
すると おくさん は、はずかしそう に こたえました。
「ええ、じつ は レタス が どうしても たべたいの」
「なんだ、そんな こと か。それなら、すぐ に かってきて やるよ」
おっと は すぐ に まち へ いく と、おくさん の ために レタス を やま の ように かって きました。
しかし おくさん は、その レタス を たべようとは しません。
「ちがうの。あたし が どうしても たべたい レタス は、あの レタス なの」
おくさん は そう いって まじょ の やさいばたけ に ある、あわい ひかり を はなつ レタス を ゆびさしました。
「なんだって! そんなこと を いったって、あの レタス は まじょ の もの だぞ」
「ええ、わかっているわ。でも、どうしても あの レタス が たべたいの
「しかし・・・」
このまま おくさん が なに も たべなければ、おくさん も おなか に いる あかちゃん も しんで しまいます。
「・・・わかった。なんとか するよ」
おっと は けっしん すると そのひ の よる、まじょ の にわ に しのびこみました。
まじょ の にわ に しのびこんだ おっと は、まじょ の やさいばたけ から あわい ひかり を はなつ レタス の はっぱ を いちまい ぬすみとる と、それ を おくさん に たべさせました。
すると レタス を たべた おくさん の あおじろいかお に、ぽっと あかみ が もどりました。
「ああっ、なんて おいしいのかしら」
その ひ から おっと は まいばん まじょ の にわ に しのびこむ と、レタス の はっぱ を ぬすみとりました。
そんな ある ひ、おっと が レタス の はっぱ を ぬすみとって いるの を、まじょ に みつかって しまったのです。
まじょ は おそろしい め で、おっと を にらみつけました。
「わたし の たいせつな レタス を ぬすんでいたのは、おまえ か! このまま、いきてかえれる と おもうな!」
すると おっと は、まじょ に て を あわせて あやまりました。
「おゆるし ください!
じつ は わたし の つま が、まじょさま の レタス しか くち に しないのです。
これ を たべない と、つま も おなか の あかんぼう も しんでしまいます」
すると まじょ が きゅう に たいど を かえて、にっこり わらいました。
「そうかい。それは、たいへん だったね。
それなら いくらでも すきなだけ、おくさん に レタス を たべさせてあげる と いいよ」
「ほっ、ほんとう ですか? ありがとうございます!」
まじょ の ことば に、おっと は おおよろこび です。
しかし まじょ は、ニヤリ と わらう と こんな こと を いいました。
「ただし、おまえ の おくさん が ぶじ に あかんぼう を うんだら、その こ を わたし に さしだすんだ。
この わたし が ほんとう の ははおや の ように かわいがって、その こ を そだててやるよ」
「えっ?! そっ、そんな こと は。
こども は、わたしたち の ねんがん だったのです。
いくら なんでも、レタス の かわり に こども を やるわけには」
「そうかい。 なら、レタス は あげないよ。
おまえ の おくさん も おなか の あかんぼう も、そのまま うえじに すればいい」
「そんな・・・」
まじょ の レタス が て に はいらなければ、おくさん と おなか の あかちゃん は しんでしまいます。
おっと は ふたり に しなれる よりも、せめて おくさん には いきてほしい と おもい、しかたなく まじょ と やくそく しました。
「・・・わかりました。このままでは、つま と おなか の あかんぼう は しんでしまいます。
うまれた こども は あなた に さしあげます から、どうか レタス を わけてください」
「ああ、それ が いいよ。なあに、しんぱい する こと は ない。
こども は わたし が、ちゃんと そだてて やるからね」
やがて ふうふ に かわいい おんな の あかちゃん が うまれました が、すぐに まじょ が やってきて つれて かえりました。
まじょ は その あかちゃん に、やせい の レタス と いう いみ の『ラプンツェル』と なづけ ました。
まじょ に そだてられた ラプンツェル は、この せかい に ふたり と いない ほど うつくしい むすめ に そだちました。
ラプンツェル が 12さい に なると、まじょ は ふと かんがえました。
「これだけ びじん だと、わたし の かわいい ラプンツェル に わるい おとこども が め を つける かも しれないね」
そこで まじょ は もり の おく に いりぐち の ない たかい とう を つくる と、その とう の うえ の へや に ラプンツェル を とじこめる こと に したのです。
「これで よし。これで ラプンツェル は、わたし だけ の もの さ」
この とう には いりぐち が ないので、いくら まじょ でも なか に はいる こと が できません。
そこで まじょ は ラプンツェル に あい に いく とき、とう の した から ラプンツェル に おおきな こえ で いうのです。
「ラプンツェル! ラプンツェル! おまえ の うつくしい かみ を、たらして おくれ!」
すると ラプンツェル は おうごん を ほそながく ひきのばして つくった ような、ながくて うつしい きんぱつ を とう の した に のばします。
まじょ は その ラプンツェル の ながい きんぱつ を のぼって、ラプンツェル に あい に いく です。
ラプンツェル が とう の うえ で くらす ように なってから、3ねんめ の あるひ。
この くに の おうじ が、うま に のって もり を とおりかかりました。
「まったく、ちちうえ にも こまった ものだ。
ぼく の かお を みる たび に、はやく けっこん しろ と いう の だからな。
そんな に あわて なくても、きっと うんめい の であい が あるさ」
おしろ に いる と ちちおや で ある おうさま に けっこん の こと ばかり いわれる ので、おうじ は にげる ように もり へ さんぽ に きたのです。
もり を すすむ に つれて、あたり が うすぐらく なってきました。
「そう いえば、この もり には まじょ が すんでいる そうだ。き を つけないと な」
その とき、おうじ は もり の おく から、てんし の ような うつくしい うたごえ を きいたのです。
♪ラララー、ララララーー ♪ラララー、ララララーー
「なんて うつくしい うたごえ だろう」
おうじ は うたごえ を たより に もり の おく へ はいっていき、とう の うえ に とじこめられている ラプンツェル を みつけました。
うつくしい うたごえ は、ラプンツェル が とう の うえ から うたっていた ものです。
おうじ は ラプンツェル の うつくしさ と うたごえ に、こころ を うばわれました。
「あの おんな の ひと こそ、わたし の うんめい の ひと に ちがいない」
ラプンツェル に ひとめぼれ を した おうじ は、ラプンツェル の いる とう の した に やってきました。
しかし この とう には、どこ を さがして も いりぐち が ありません。
「こんな とう を つくる のは、きっと まじょ に ちがいない」
すると そこへ、まじょ が たべもの を もって やってきました。
おうじ は まじょ に みつからない よう、すぐ に かくれました。
まじょ は おうじ が かくれている とも しらず、いつも の ように とう の うえ の ラプンツェル に よびかけます。
「ラプンツェル! ラプンツェル! おまえ の うつくしい かみ を、たらして おくれ!」
それ を きいた ラプンツェル が あんだ かみのけ を した に たらす と、まじょ は それ を つたって とう の うえ に のぼって いきます。
これ を みた おうじ は、まじょ が かえる と とう の した に いって いいました。
「ラプンツェル! ラプンツェル! おまえ の うつくしい かみ を、たらして おくれ!」
すると とう の うえ から ラプンツェル の かみのけ が おりて きたので、おうじ は その かみのけ を つたって とう の うえ へ のぼって いきました。
「おばあさん、なにか おわすれもの ですか?」
そう いった ラプンツェル は、のぼってきた のが おうじ だった ので びっくり です。
「あっ、あなた は だれ!?」
ラプンツェル は いままで まじょ と くらしていたので、おとこ の ひと を みたこと が なかったのです。
おうじ は ラプンツェル に、にっこり ほほえみました。
「とつぜん あらわれて、すみません。じつ は あなた の うたごえ に こころ を ひかれて、ここ に やってきたのです」
ラプンツェル は とても おどろきました が、しかし おうじ の やさしい えがお を みて あんしん しました。
まじょ が ラプンツェル の ところ に やってくる のは いつも ひるま だったので、その ひ から おうじ は まいにち ゆうがた に なると ラプンツェル に あい に いきました。
おうじ は ラプンツェル に、いろいろな こと を おしえてくれました。
このくに は とても ひろく、おおぜい の ひと が すんでいる こと。
くに の そと には さらに おおきな せかい が ひろがっていて、そこには うみ や やま が ある こと。
おうじ は おしろ に すんでいて、このくにの ため に はたらいている こと。
まじょ の おばあさん と、この とう が すべて だった ラプンツェル には、とても すてきな おはなし ばかり です。
おうじ の はなし を きくうち に、ラプンツェル は そと の せかい へ いってみたい と おもうように なりました。
そんな ある ひ、おうじ が ラプンツェル に いいました。
「ラプンツェル、ぼく は あなた が すきです。どうか この とう を でて、ぼく と いっしょ に しろ で くらして くれませんか?」
「ええ。わたし も、あなた と いっしょ に そと の せかい へ いきたいの。でも、どうやって とう を でれば いいの?」
ほか の ひと は ラプンツェル の かみのけ を つたって のぼりおり できますが、ラプンツェル じしん は とう を のぼりおり すること が できません。
すこし かんがえた おうじ は、ラプンツェル に いいました。
「それでは、これから まいにち、きぬいと を すこしずつ もってきます。
その きぬいと で はしご を あんで、ここから でて いきましょう」
つぎ の ひ から おうじ は ラプンツェル の ところ に きぬいと を すこし ずつ もっていき、ラプンツェル は その きぬいと を あんで はしご を つくりました。
さて、この とう の へや には、きぬいと の はしご を かくす ところ が ありません。
そこで ラプンツェル は まじょ に きづかれない ように、つくった きぬいと の はしご を じぶん の ながい かみのけ の なか に かくしました。
そして 1ヵげつ も すると、とう の した まで とどく きぬいと の はしご が かんせい したのです。
いよいよ あした は、ラプンツェル が とう の うえ から にげだす ひ です。
その ひ の おひる、いつも の よう に やってきた まじょ は、ラプンツェル の ながくて うつしい きんぱつ を なでながら いいました。
「おまえ の かみ は、いつ みても うつくしいね。
これから も わたし の ため に、その かみ を のばし つづけるんだよ。・・・おや?」
まじょ は ラプンツェル の かみ を なでながら、きんぱつ の なか に しろい もの が まじっているのに きづきました。
「これは なんだい? おまえ の うつくしい きんぱつ の なか に、しろい け が まじっているよ」
そして まじょ は ラプンツェル が かみのけ の なか に かくしてあった、きぬいと の はしご を みつけたのです。
まじょ は おそろしい め で、ラプンツェル を にらみつけました。
「なんだい! この かみのけ に、かくしている はしごは!
もしかして おまえ、この わたし から にげる つもり なのかい!」
「ごめんなさい。でも、わたし、そと の せかい を しりたい の です」
「そと の せかい だって!? そうかい、おまえ に わるい おとこ が ついたんだね!
せっかく おまえ を せけん から ひきはなして おいたのに、なんてことだい!
いままで そだてて やった おん を わすれて でて いこう なんて、おまえ は なんて ばちあたり なんだ!
おまえ なんか、もう わたし の むすめ じゃ ないよ!
のぞみ どおり、そと の せかい に ほうりだして やるわ!!」
まじょ は そう いう と おおきな ハサミ で ラプンツェル の ながく うつくしい かみのけ を、ジョキリ ジョキリ と みじかく きりおとし ました。
そして ラプンツェル を とう から ひきづり だす と、きのみ きのまま で せかい の はて の あれの に ラプンツェル を おきざり に したのです。
さて、そうとは しらない おうじ は、ゆうがた に なると とう の うえ に よびかけました。
「ラプンツェル、ぼく だよ。きぬいと の はしご で、おりて きて おくれ」
しかし、ラプンツェル から の へんじ は ありません。
そのかわり とう の うえ から、ラプンツェル の ながい かみのけ が おりて きました。
「おや? ぼくに、のぼって きて ほしい の かな?」
おうじ は ラプンツェル の かみのけ を つたって、とう の うえ へ のぼって いきました。
すると そこに いた のは ラプンツェル ではなく、あの まじょ だった のです。
まじょ は おうじ を にらみつける と、いじわるく わらい ました。
「おやおや。だれかと おもえば、おうじさま だったのかい。
ざんねん だけど おまえ の いとしい むすめ は、せかい の はて の あれの に すててきたよ」
「なんだって! よくも ラプンツェル に、ひどい こと を!」
「ひどい? ひどい のは、どっち だい?!
おまえ の ほう こそ、わたし の かわいいい ラプンツェル を うばって おいて。
おうじさま だから ころし は しない けど、ばつ と して おまえ の めだま を もらうよ」
まじょ は そういって、おうじ を とう の うえ から した の イバラ の なか に つきおとしました。
「うわぁぁぁー!」
イバラ の なか に つきおとされた おうじ は イバラ の トゲ が め に はいって、そのまま め が みえなく なって しまいました。
「あははははは! いい きみ だね。
これで もし、おまえ が ラプンツェル と さいかい できた と しても、おまえ は いっしょう ラプンツェル を みる こと が できないよ」
まじょ は たかわらい を しながら、どこか へ いって しまいました。
おうじ は め が みえなく なってしまいました が、まだ ラプンツェル を あきらめません でした。
「ラプンツェル、まって いろよ。ぼく が かならず、たすけて やるから」
おうじ は たちあがる と、あれの に すてられた ラプンツェル を さがす たび に でました。
おうじ の ラプンツェル を さがす たび は、とても つらい たび でした。
め が みえない おうじ は き の ね や くさ の み を たべ、あまつゆ を すすり、ぜんしん が きず だらけ の ボロボロ でしたが、
いちにち も やすむ こと なく、なんねん も なんねん も ラプンツェル を さがし つづけ ました。
「ラプンツェル は、ぼく の つま だ。かならず たすけてやる」
そんな ある ひ、め の みえない おうじ の みみ に、なつかしい うたごえ が きこえて きました。
♪ラララー、ララララーー ♪ラララー、ララララーー
「この うたごえ は!」
その うつくしい うたごえ は、おうじ が さがし つづけた ラプンツェル の うたごえ です。
おうじ は うたごえ に むかって、こえ を はりあげました。
「ラプンツェル! そこ で うたって いるのは、ラプンツェル かい!?」
すると その こえ に、うたっていた ラプンツェル が ふりかえり ました。
「ああっ、おうじさまー!」
ラプンツェル は、おうじ の むね に とびこみ ました。
おうじ は、いとし の ラプンツェル を しっかり と だきしめます。
「ラプンツェル、ぶじ だったんだね」
「ええ、いつか おうじさま が むかえ に きてくれる こと を しんじて、ずっと ここ で まって いました」
「そうか。おそく なって すまなかった」
ラプンツェル の め にも おうじ の みえない め にも、なみだ が つぎつぎ と あふれでました。
「ラプンツェル、ぼくには もう きみ の うつくしい すがた を みる こと が できない が、こうして きみ と いっしょ に いられる だけ で じゅうぶん に しあわせだ。さあ、いっしょ に かえろう」
「はい」
そのとき、ラプンツェル の め から あふれでた なみだ が、おうじ の みえない め に ふりそそぎました。
すると そのとたん おうじ の め に ひかり が よみがえって、おうじ の め が みえる ように なったのです。
「みえる、みえるよ! きみ の うつくしい すがた が、はっきり と みえるよ!」
そのご、め が みえる ように なった おうじ は ラプンツェル を おしろ に つれてかえり、
くにじゅう の ひとびと が おいわい する なか、ふたり は けっこん したのです。
そして ラプンツェル の ほんとう の りょうしん も おしろ で くらす こと に なり、
やがて おう に なった おうじ と ラプンツェル は、りょうしん たち と いっしょ に いつまでも しあわせ に くらしたのでした。
(※ のこり の いらすと は、まもなく こうかい)
おしまい
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