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ふくむすめどうわしゅう(福娘童話集) > がいこくご > にほんむかしばなし

ツルのおんがえし

ツル の おんがえし

おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
鶴の折り紙つる   紅白鶴①の折り紙こうはくつる①

♪Reading in Japanese
音声 スタヂオせんむ



にほんご ←→ にほんご & えいご ←→ えいご

 むかしむかし、まずしい けれど、こころ の やさしい おじいさん と おばあさん が いました。



  ある さむい ふゆ の ひ、おじいさん は まち へ たきぎ を うり に でかけました。

 すると とちゅう の たんぼ の なか で、いちわ の ツル が ワナ に かかって もがいて いたのです。

「おお、おお、かわいそうに」

 おじいさん は かわいそう に おもって、ツル を にがして やりました。

 すると ツル は、おじいさん の あたま の うえ を さんベん まわって、

「カウ、カウ、カウ」

と、さも うれしそうに ないて、とんでいきました。



 その よる、ひぐれごろ から ふりはじめた ゆき が、コンコン と つもって おおゆき に なりました。

 おじいさん が おばあさん に ツル を たすけた はなし を している と、おもて の と を、

 トントン、トントン

と、たたく おと が します。

「ごめんください。あけて くださいまし」

 わかい おんな の ひと の こえ です。

 おばあさん が と を あける と、あたま から ゆき を かぶった むすめ が たって いました。

 おばあさん は おどろいて、

「まあ、まあ、さむかった でしょう。さあ、はや くおはいり」

と、むすめ を いえ に いれて やりました。

「わたし は、この あたり に ひと を たずねて きました が、

 どこを さがしても みあたらず、ゆき は ふるし、ひ は くれるし、やっと の こと で ここまで まいりました。

 ごめいわく でしょう が、どうか ひとばん とめて ください まし」

 むすめ は ていねい に、て を ついて たのみました。

「それは それは、さぞ、おこまり じゃろう。

 こんな ところで よかったら、どうぞ、おとまりなさい」

「ありがとうございます」

 むすめ は よろこん で、その ばん は しょくじ の てつだい など を して はたらいて やすみました。



 あくる あさ、おばあさん が め を さます と、むすめ は もう おきて はたらいて いました。

 いろり には ひ が もえ、なべ から は ゆげ が あがっています。

 そればかりか、いえじゅう が きれい に そうじ されて いるのです。

「まあ、まあ、ごはん ばかりか、おそうじ まで してくれたのかね。ありがとう」


 つぎ の ひ も、その つぎ の ひ も おおゆき で、と を あける こと も できません。

 むすめ は、おじいさん の かた を もんで くれました。

「おお、おお、なんて よく はたらく むすめさん じゃ。

 なんて よく き の つく やさしい むすめさん じゃ。

 こんな むすめ が いえ に いてくれたら、どんなに うれしいじゃろう」

 おじいさん と おばあさん は、かお を みあわせました。

 すると むすめ が、て を ついて たのみました。

「みより の ない むすめ です。

 どうぞ、この いえ に おいて くださいませ」

「おお、おお」

「まあ、まあ」

 おじいさん と おばあさん は よろこんで、それから さんにん まずしい けれど たのしい まいにち を すごしました。



 さて、あるひ の こと。

 むすめ が はた を おりたい から、いと を かって ください と たのみました。

 おじいさん が いと を かって くると、むすめ は はた の まわり に びょうぶ を たてて、

「はた を おりあげる まで、けっして のぞかないで ください」

と、いって、はた を おりはじめました。

 キコバタトン、キコバタトン。

 むすめ が はた を おって、みっか が たちました。

 ようやく はた を おりおえた むすめ は、

「おじいさま、おばあさま、この あやにしき を まち へ うりに いって、かえりには また、いと を かってきて ください」

と、むすめ は そら の くも の ように かるい、うつくしい おりもの を ふたり に みせました。

「これは、すばらしい」

 おじいさん が まち へ うり に いくと、それ を とのさま が たかい ねだん で かってくれました。

 おじいさん は よろこんで、いと を かって かえりました。

 すると むすめ は また、はた を おりはじめました。

「ねえ、おじいさん。あの むすめ は いったい どうして、あんな みごとな ぬの を おるの でしょうね。

 ・・・ほんの すこし、のぞいてみましょう」

 おばあさん が びょうぶ の すきま から のぞいて みると、そこに むすめ は いなくて、

 やせこけた いっぴき の ツル が ながい くちばし で じぶん の うもう を ひきぬいては、いと に はさんで はた を おっていたのです。

「おじいさん、おじいさんや」

 おどろいた おばあさん は、おじいさん に このこと を はなしました。

 キコバタトン、キコバタトン・・・。

 はた の おと が やんで、まえ よりも やせほそった むすめ が ぬの を かかえて でてきました。

「おじいさま、おばあさま。もう、かくしていても しかたありませんね。

 わたしは、いつか たすけられた ツル で ございます。

 ごおん を おかえししたい と おもって むすめ に なって まいりました。

 けれど、もう おわかれ で ございます。

 どうぞ、いつまでも おたっしゃ で いて くださいませ」

 そう いったかと おもうと、おじいさん と おばあさん が とめる のも きかず、たちまち いちわ の ツル に なって そら へ まいあがりました。

 そして いえ の うえ を、さんベん まわって、

「カウ、カウ、カウ」

と、なきながら、やま の むこう へ とんで いって しまいました。

「ツルや。いや、むすめや。

 どうか おまえ も、たっしゃ で いておくれ。

 ・・・いままで、ありがとう」

 おじいさん と おばあさん は、いつまでも いつまでも ツル を みおくりました。

 それから のち、ふたり は むすめ の おった ぬの を うった おかね で しあわせ に くらしました。

おしまい

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