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ネコの茶碗

ネコ の ちゃわん

♪Reading in Japanese
音声 ☆横島小次郎☆



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 むかしむかし、ある とうげ で ちゃみせ を ひらいている おばあさん が、いっぴき の ネコ を かっていました。

 どこにでも いる ただ の ネコ ですが、その ネコ の ごはん を 入れている ちゃわん が なんとも すばらしい ちゃわん で、めきき の ひと なら のどから て が でる ほどです。



 あるひ、ちゃみせ で やすんでいた かねもち の だんな が、それ を みて おどろきました。

(ネコ に こばん とは、よく いった ものだ。

 この ばあさん、ちゃわん の ねうち が まるで わかっていない)

 そこで だんな は、なんとかして ネコ の ちゃわん を て に いれたい と かんがえました。

 だんな は ネコ の そば へ ちかよる と、その あたま を なでながら いいました。

「なんて、かわいい ネコ だ。じつに すばらしい」

「そうですか? いちにちじゅう ブラブラ している、なん の やく にも たたん ネコ ですよ」

「いやいや。なかなか に、りこうそうな ネコ だ。それに、け の つや も いい。

 なんなら、わし に ゆずっては くれないか?」

「まあ、かわいがって くれるなら、ゆずっても いいですよ」

 おばあさん の ことば に、だんな は しめた と おもいました。

 あと は ネコ と いっしょ に、あの ちゃわん も つけて もらえば いいのです。

「それで、いくらで ネコ を ゆずって くれるかな?」

「そうですね。ネコ の こと ですから たかく も いえません が、いちりょう で ゆずりましょう」

「はっ? いちりょう も!」

(こんな きたない ネコ に いちりょう も だせ とは、とんだ ばあさん だ)

と、おもいました が、あの ちゃわん は、とても いちりょう や にりょう で かえる しなもの では ありません。

「わかった。いちりょう だそう」

 だんな は さいふ から いちりょうこばん を とりだして、おばあさん に わたしました。

 ここから が、ほんばん です。

「ところで、ついで に この ちゃわん も もらって いいかな?

 あたらしい ちゃわん より たべなれた ちゃわん の ほう が、ネコ も よろこぶ と おもう ので」

 その とたん、おばあさん が ピシャリ と いいました。

「いいえ、ちゃわん を つける わけ には いきません。これは、わし の だいじな たからもの ですから!」

(ちぇっ、この ばあさん、ちゃわん の ねうち を ちゃん と しって いやがる)

 だんな は くやしくなって、おもわず こえ を はりあげました。

「だいじな たからもの なら、なんで ネコ の ちゃわん なんか に するんだ!」

「なに に つかおう と、わし の かって でしょうが! さあ、ネコ を もって、とっと と かえって おくれ。

 この ちゃわん は、いくら かね を つまれたって ゆずりません からね!」

 だんな は しかたなく、ネコ を だいて みせ を でて いきました。

 でも、もともと ネコ が すきでない だんな は、

「ええい、はら が たつ! おまえ なんか、どこへ でも いけ!」

と、とうげ の とちゅう で ネコ を なげすてました。

 ネコ は クルリ と かいてん して ちゃくち すると、そのまま とぶよう に ちゃみせ へと もどって いきました。

「よし、よし。よう もどってきたね」

 おばあさん は ネコ を だきあげる と、なんども あたま を なでて やりました。

「おまえ の おかげ で、また もうかったよ。

 これで にじゅうりょうめ だね。

 ヒッヒッヒッヒッヒッヒッ」

おしまい

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