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Abandoned Wife
イラスト myi

すてられた にょうぼう

(にほんのむかしばなし)

♪Reading in Japanese
音声 『Web団 零点』



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 むかしむかし、みやこ の はずれ に、たいそう びんぼう な おとこ が すんで いました。

 ところが その おとこ の しりあい が、とても しゅっせ して とおい くに の おとのさま に なったのです。

 そこで おとこ は、その おとのさま の けらい として、ついて いく こと に なりました。

「これで やっと、じぶん にも うん が むいて きたぞ」

と、よろこんで みたものの、おとこ には たび の したく を する かね さえ ありません。

 それで おとこ は ながいあいだ つれそった やさしい にょうぼう を すてて、かねもち の いえ の あたらしい おんな を めとり、

 その おんな に かね を だして もらう こと に したのです。

 ところ が あたらしい にょうぼう は わがまま で、おとこ に ふへい ばかり いって います。

 そのうち に、おとこ は だんだん まえ の にょうぼう が こいしく なってきました。

 けれど かね を だしてもらった てまえ、あたらしい にょうぼう を おいだす わけ にも いきません。

「いま の にょうぼう とは、かたちだけ の ふうふ。

 ・・・ああっ、びんぼう でも よいから、まえ の にょうぼう と くらしたい のう」

 おとこ は しだい に、そう おもう ように なっていました。

 そのうち なんねん か たち、とのさま は、また きょう へ もどる こと に なったのです。

「これで、あいつ に あう こと が できる」

 おとこ は きょう に つく と あたらしい にょうぼう を じっか へ かえして、すぐに もと の じぶん の いえ へ もどりました。

 ところ が いえ に ついてみると、とても ひと が すんでいる とは おもえない ほど の ひどい あれよう です。

「これが、わし の いえ だろうか?」

と、おとこ は もん の まえ に たちすくみました。

「にょうぼう の やつ、わし を うらんで でていきおった に ちがいない。

 ・・・いや、わるい のは わし だ。にょうぼう を せめても しかたがない」

 そう おもいながら も なか に はいって みると、いつも の ばしょ に にょうぼう が すわって いる では ありませんか。

「おまえ、まっていて くれた のか!」

 おとこ は にょうぼう の そば へ かけより、しっかり と だきしめました。

「あなた、おかえりなさい」

 にょうぼう は もんく ひとつ いわず、うれしそう に おとこ の かお を みました。

「ゆるしてくれ。わし が わるかった。

 わし の にょうぼう は おまえ だ。もう けっして はなすまいぞ」

 ふたり は よる の ふける のも わすれて かたりあい、あけがた に なって、やっと ねどこ に はいったのです。

 ひさしぶり の わがや に、おとこ は あんしん して ぐっすり と ねむりました。

 それから、どのくらい すぎたでしょう。

 おとこ が め を さました ころ には、もう ひ が さしこんで いました。

「いやあ、よく ねむった」

と、にょうぼう を みて、おとこ は、

「あっ!」

と、おどろいて、とびおきました。

 それも そのはず、なんと そこには、ほね だけ に なった にょうぼう の しがい が よこたわって いるのです。

「これは いったい、どうしたことじゃ!?」

 おとこ は ねまき の まま となり の いえ へ とびこみ、つま の こと を たずねました。

 すると、となり の いえ の ひと が いいました。

「ああ、その ひと なら きょねん なくなられましたよ。

 なんでも、ごしゅじん が あたらしい おくがた を つれて とおい くに へ いって しまった とかで、それは ひどく かなしんで おられてのう。

 そのうち やまい に たおれられた ごようす じゃった が、かんびょう する ひと も のうて、しんで しまわれたそうな。

 おそうしき を する ひと とて なく、なきがら も そのまま だと いうので、こわがって ちかよる ひと も ありません」

「では、きのう あったの は、にょうぼう の ゆうれい だったのか」

 そう おもう と おとこ は きゅう に おそろしくなり、そのまま に にげだす と、どこか へ きえて しまいました。

おしまい

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