8月19日のイソップ童話
馬とウシとイヌと人間
人間をつくったのはゼウスの神ですが、はじめゼウスは、人間がはやく死ぬように、みじかい寿命しかあたえませんでした。
しかし人間は頭がよかったので、冬になると自分で家をたてて、その中であたたかくくらしました。
さて、ある日のこと。
寒さがきゅうにきびしくなり、つめたい雨までふりだしました。
外にいた馬は、もうがまんができなくなって、人間の家にやってきました。
「人間さん、どうかわたしをあなたのおうちに入れて、寒さをしのがせて下さい」
すると人間は、
「いいよ。ただし、1つだけ条件がある。おまえの寿命をすこしわたしにわけてくれるなら、入れてやるよ」
「はいはい。よろこんでさしあげます」
馬は寿命をなん年かわけてあげる約束で、家に入れてもらいました。
こんどは、ウシがきました。
「おお、さむいさむい。もうたまらない。あなたの家に入れて下さいよ」
人間はこんども、
「おまえの寿命を、わたしにすこしわけてくれれば、入れてやるよ」
ウシも寿命をすこしゆずることにして、入れてもらいました。
さいごにイヌが、寒さでこごえ死にそうになってきました。
そしてまた、寿命をすこし人間にわけてあげることにして、家に入れてもらいました。
さあ、このために、どういうことになったか、わかりますか?
人間が、はじめにゼウスの神からもらった寿命を生きているあいだは、むじゃきでよい性質です。
ところが、その寿命がなくなって、馬からわけてもらった寿命を生きることになると、えらそうにして、いばりやになります。
次に、こんどはウシからもらった寿命のぶんを生きるときには、命令したりするのが、自分の仕事だと思うようになります。
そしてさいごに、イヌのくれた年を生きるころには、おこりっぽい、がんこ者になるのです。
このお話しは、おこりっぽくてがんこ者の、気むずかしいお年よりに聞かせてやるとよいでしょう。
おしまい
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