10月12日のイソップ童話
大きい魚と小さい魚
ひろいひろい海の中には、さまざまな魚が住んでいます。
人間より大きい魚もいれば、赤ちゃんの小指より小さい魚もいます。
魚たちの中には、ただ体が大きいというだけで、やたらにいばる魚もいます。
「やい、どけ、どけ、小魚どもめ。おれさまが見えないのか。じゃまをすると承知しないぞ」
気の毒に、小さい魚は大きい魚をこわがって、いつもビクビクしていました。
さて、ある日のこと。
一人の漁師が沖へ船をこぎ出しました。
漁師は魚をとるアミを、海にばっと投げかけました。
「うわーっ、助けてくれ」
アミにかかった大きな魚が、じたばたしながらさけびました。
小さな魚もいっしょにつかまりましたが、こちらはアミの目のあいだからするりと逃げ出して、そのまま海の中に戻っていきました。
けれども大きい魚はアミごと引き上げられてしまい、二度と海へはかえれませんでした。
目立たないけどつつましい人は災難を逃れ、目立つ有名な人は、災難にあいやすいものです。
世の中は、大きいよりも小さい方が得をすることがあるのです。
おしまい
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