10月30日のイソップ童話
おばあさんと目医者
あるおばあさんが目の病気にかかり、目が見えなくなって寝こんでいましたが、友だちに、どんな目の病気でも治すという、名医の目医者がいると聞いたので、おばあさんはその目医者を呼んで、きちんとお金はらうから、どうか目をなおしてほしいとたのみました。
目医者はたしかに名医で、おばあさんの見えない目は、だんだん見えてくるようになりましたが、じつはこの目医者はドロボウでした。
おばあさんの家にきて手あてをしますが、くるたびに、ちりょうでおばあさんが目をつぶっているすきに、部屋にある家具を、1つずつ、こっそり持ってかえっていたのです。
家じゅうの家具を、次々にぜんぶぬすみおえたとき、おばあさんの目は完全に見えるようになりました。
医者は、
「目の治療がすんだから、約束の金をはらえ」
と、おばあさんにいいました。
すると、おばあさんは、
「いいえ、お金をはらうわけにはいきません」
と、いいました。
医者はおこって、裁判官のところへ、おばあさんをひっぱっていきました。
裁判官に、
「なぜ、目の治療がすんだのに、約束どおり、お金をはらわないのか」
と、聞かれると、おばあさんは、
「たしかにわたしは、『目をなおしてくれたらお金をはらう』と、いいましたよ。だけどわたしの目は、まだなおっていません。だって、うちの中の家具が、なにひとつ見えないのですから」
このお話しのように、人をだましてよくばったことをする人間は、自分自身で罪の証拠(しょうこ)を作ってしまい、その結果、自分のおかした罪をつぐなうはめになるのです。
おしまい
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