きょうの江戸小話
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10月30日の小話

貧乏医者

貧乏医者

 ある日のこと、医者がガックリ肩を落とし、とぼとぼと歩いておりました。
「先生、いかがなさいました。どこか具合でも悪いのでは、ございませんか」
と、通りがかりの町人が声をかけると、医者は残念そうな顔をして、
「いやいや、そうではない。実は、病人を三人もなくしてしまったのじゃ」
「えっ、三人も死んでしまったのでございますか。それはお気の毒に」
「いや、そうじゃない、三人とも、すっかり病気が治ってしまったのじゃ」
「・・・? それは、めでたいことでは?」
「いや、いや、三人も病人をなくしてしまっては、わしは、また明日から食べる銭にも不自由する。そう思うと、悲しくてな」

おしまい

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