きょうの日本昔話
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3月10日の日本の昔話

八人の真ん中

八人の真ん中

 むかしむかし、彦一(ひこいち→詳細)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
 ある日、お城から彦一のところへ、こんな知らせが届きました。
《若さまの誕生祝いをするから、お城へ参れ、庄屋(しょうや→詳細)とほかに村の者を六人、あわせて八人。きっかり八人で来るように》
「お城から、およびがかかるとは、ありがたいこっちゃ」
 庄屋さんは、誰とだれを連れていこうか、六人をえらびだすのに苦労(くろう)しています。
 しかし彦一は、その手紙を見ながら考えました。
「この、八人きっかりと、念を押しているところがあやしいな。あの殿さまのことだ、また、なにかたくらんでいるにちがいないぞ」
 さて、今日はお城にいく日です。
 いわれた通り、彦一と庄屋さん、それに選ばれた六人の村人の、きっかり八人がそろいました。
 庄屋さんと彦一以外の六人の村人たちは、生れてはじめてお城の中に入るので、少しきんちょうしています。
「おら、ごちそうの食べ方が、わからねえだ」
「おらもだ。どうするべ」
 すると彦一が、
「なあに、庄屋さんのまねすりゃいいだよ」
 その言葉に安心した六人は、
「それもそうだな。わはははははっ」
 そうこう言っているあいだに、八人はお城に着きました。
 大広間では、すでに若さまのお誕生日を祝う会が始まっています。
 正面の高いところに、殿さま、奥さま、若さま、そしてまわりに大勢の家来達や、お付きの人達がいます。
「若さまのお誕生日、おめでとうございます」
と、庄屋さんがあいさつをしました。
 八人とも大広間のすみで、小さくなっていました。
「おう、参ったか、彦一め。うむ、きっかり八人できたな、わははは」
 殿さまの笑い声からすると、やはり、なにかをたくらんでいる様子です。
「こっちへ参れ。くるしゅうないぞ。若もその方が喜ぶ。さあ、遠慮するな」
 いわれて、彦一たちは、殿さまの席の近くまで、ゾロゾロとすすみました。
「さて、一つ注文をいたす。彦一は、ならんだ八人のちょうどまん中にすわるようにいたせ。よいな」
 そういうと、殿さまは若さまを見ながら、ニヤニヤと笑いました。
 やはり、殿さまたちのはかりごとだったのです。
 急な注文なので、彦一がボンヤリしていると、こんどは若さまの声がとんできました。
「彦一、これができなければ、このままお帰り!」
 家来やお付きたちは、みんな飲み食いをやめて、ジッと彦一を見つめています。
 人数が、五人とか、七人とか、九人だったら、右左どちらからかぞえても、ちょうどまん中になる席ができます。
 けれども、八人ではそうはいきません。
「あの小僧。知恵者だと評判だが、どうするつもりだろう?」
「しかし、殿さまもお人が悪い。八人では、どう考えても、まん中にはすわれんではないか」
 けらいたちは、声をひそめて話していましたが、やがて大広間は、水を打ったようにシーンとなりました。
「おい、彦一。こりゃむりだ。あやまって帰るべえ」
 ひや汗をながしながら、庄屋さんは彦一のそでを引きました。
 その時、彦一に名案(めいあん)がうかびました。
「殿さま、私がまん中になれば、どんなすわり方をしてもいいのですか?」
「ああ、いいとも。ただし、上にかさなるのはだめじゃ」
「承知しました」
 彦一はニッコリ笑うと、
「みんな、私をかこんで、まるくなっておくれ。これなら、どこから見ても、私はちょうどまん中だ」
 みんなはいわれたとおり、彦一を中心(ちゅうしん)にして、まるく車座(くるまざ→輪になってすわること)にすわりました。
 これなら、七人でも八人でも、ちゃんとまん中ができます。
「うむ、あっぱれだ! 彦一よ。今度もそちの勝ちじゃ」
 殿さまの言葉に、家来も庄屋さんたちも、どっと声をあげました。
「これ、はやくお膳(ぜん)を用意をせい。それから、ほうびもじゃ」
 庄屋さんたちは、彦一のとんちのおかげで、たっぷりとごちそうになり、上機嫌(じょうきげん)で帰って行きました。

おしまい

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