5月19日の日本の昔話
イラスト たつよ
けものの皮は叩かれる
一休さんのとんち話
むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
お寺の檀家(だんか)に、碁(ご)が大好きなご隠居(いんきょ)がいるのですが、
近頃そのご隠居が毎晩お寺にやって来て、和尚(おしょう)さんと夜遅くまで碁をうっていました。
朝の早い小僧たちは、ねむくてかないません。
「何とかして、ご隠居が来ない様にしないと」
一休さんは色々と考えましたが、下手ないたずらをすると和尚さんにしかられるので、なかなかよい方法が浮かびません。
さて、この頃はとても寒いせいか、ご隠居は、けものの皮で出来たそでなしをはおっています。
それを見た一休さんに、ある名案が浮かびました。
(そうだ、いい事がある)
次の日、一休さんはお寺の門に、こんな張り紙をしました。
《けものの皮は、入るべからず》
ご隠居は、この張り紙を見て、
「なに?
けものの皮は、入るべからずだと。
けものの皮とは、わしの事か。
・・・ははーん、これは一休のやつが、碁のじゃまをするつもりで書いたのだな。
・・・さて、どうするか?」
しばらく考えたご隠居は、すぐに平気な顔で門をくぐりました。
すると一休さんが、
「ご隠居さま。
門の張り紙が、よめないのですか?
動物を殺してつくるけものの皮は、お断りします。
どうか、お帰りください」
と、通せんぼをしました。
すると、ご隠居が言いました。
「確かに、この服は動物を殺したけものの皮でつくった物だ。
しかし、このお寺には、けものの皮をはった、たいこが置いてあるではないか。
たいこが良いのなら、わしもよいであろう。
どうだ」
ご隠居は一休さんをやり込めたつもりでしたが、一休さんの方が一枚上手です。
「その通り。
しかしお寺のたいこは、罪(つみ)つぐないに、毎日ばちでドンドン叩かれています。
ですからご隠居さまも、同じ様に叩かねばなりません。
それっ!」
一休さんは、ご隠居にたいこのバチを振り上げました。
「わっ、わかった! わしの負けじゃ!」
ご隠居は頭を抱えると、あわてて家へと逃げ帰りました。
おしまい
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