きょうの日本昔話
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6月6日の日本の昔話

たごかつぎ

たごかつぎ
吉四六(きっちょむ)さん

 むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
 吉四六さんの村には、平助(へいすけ)という、うそつきの名人がいました。
 この平助は、うそでだました相手の困った顔を見るのが大好きで、その為にはどんな努力も惜しまないのです。
 村人は誰でも二度や三度はだまされていますが、さすがに吉四六さんだけは、一度もだまされた事がありません。
 ですから平助は、いつか吉四六さんをだましてやろうと思っていたのでした。

 ある年の事、吉四六さんが大事にしていたメス馬の『青』が子どもを妊娠しました。
 いよいよ子どもが産まれる月となって、朝から青の様子がおかしいのです。
 吉四六さんは喜んで、
「さあ、いよいよ子馬が産まれるぞ」
と、思いましたが、あいにく今日は町へ行って、下肥(しもごえ→人の糞尿を肥料としたもの)をくみに行く日なのです。
 そこで吉四六さんは、メス馬の青の事を奥さんによく頼んで町へ出かけました。

 吉四六さんが大急ぎで肥(こえ)をくみ、重たいたごをかついで町はずれまで帰ってくると、向こうの方から急ぎ足でやって来た平助とばったり出会いました。
「平助、どこへ行くんだ?」
「ああ、町へ買い物に行くんだ」
 ここで平助は、吉四六さんをだますうそを思いつきました。
「そうだ! そんな事より吉四六さん、大変だぞ!」
「どうしたんだ?」
「お前の青が子を産みかかったが、とても難産で親も子も死にそうなんだよ」
「そりゃ、本当か!」
 吉四六さんはたごをかついだまま、顔色を変えて駆け出そうとしましたが、急に立ち止まると言いました。
「おっと。すっかり忘れていた。
 馬のお産だったら、何も心配はない。
 実はおれの家には、庄屋さんからもらった馬の薬があるんだ。
 どんな難産でも、それを一服飲ませるとすぐに子馬が産まれるという妙薬だよ。
 かみさんに頼んでおいたから、今頃はもう無事に産まれているに違いない」
 すると、平助は言いました。
「でもそう言えば、みんなで大騒ぎしていたぞ。奥さんがその薬の置き場所を忘れたのかもしれないよ」
「え? こうしちゃいられない。平助、たごは頼むよ!」
 吉四六さんはそう言うと、たごを道のまん中に置いて駆け出しました。
 それを後ろから見送った平助は、大笑いです。
「あはははははっ、吉四六さんめ、とうとう引っかかりおったぞ。
 青に何の変わりがないのを見て、さぞくやしがるだろうな。
 たごを頼まれたのは計算違いだったが、まあいい。
 はやく行って、吉四六さんのくやしがる顔でも見てやるか」
 平助は吉四六さんの置いて行ったたごを担ぐと、自分も大急ぎで引き返しました。
 しばらくいくと村の庄屋さんが、向こうからやって来ました。
「やあ、庄屋さま。いま、吉四六さんに出会いませんでしたか? おれにだまされて、あわてて帰ったはずですが」
 平助が自慢気に言うと、庄屋さんは『なるほど』と納得した顔で答えました。
「会うには会ったが、にこにこして歩いていたよ。そして、『平助は、思ったよりも馬鹿な奴だ』と、言っていたぞ」
「な、何だって?」
「そう言えばお前、吉四六さんに馬の妙薬の話を聞かなかったかい?」
「はい。庄屋さまにもらった、その薬が見つからぬと言って、おどろかしてやったのですが」
「わははははっ。平助、お前うまくかつがれたな。そんな妙薬なんかあるものか。全部、吉四六さんの作り話さ」
「何!」
「おまけに吉四六さんは、わざとあわてたふりをして、お前にたごをかつがせたんだよ。お前があんまり人をかつぎたがるから、今日はあべこべに吉四六さんからたごをかつがせられたんだよ。さすがのお前も、吉四六さんにはかなわないな。あはははははっ」
 庄屋さんは、腹をかかえて笑い出しました。
「何てこった」
 がっかりした平助は仕方なく、重たいたごをかついで村へ帰りました。

おしまい

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