9月20日の日本の昔話
かなシイ木と、うれシイ木
むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
ある年のお正月のこと。
きっちょむさんは、村の人たちといっしょに、山ヘたきぎをとりにいきました。
その山には、しいの木(ブナ科の常緑高木)が、たくさんはえていました。
村の人たちは、せっせと木のえだをおとし、それをたばねて、たきぎをつくっています。
ところがきっちょむさんは、しらん顔です。
そばの大きな木のねっこにこしかけて、スパー、スパーと、のんびりタバコをふかしていました。
そのうちに、村の人たちはたくさんたきぎをとったので、
「さあ、そろそろ帰ろうか?」
「そうだな。これくらいあればいいだろう」
と、とったたきぎをしっかりしばって、せなかにせおって帰ろうとしました。
それをみていたきっちよむさんは、どっこいしょとこしをあげて、
「おいおい、おまえさんたちは、そんなものをかついで帰る気かい?」
と、声をかけました。
村の人はおどろいて、
「えっ? そんなものって、どういうことだ?」
「だって、そのたきぎは、しいの木ばかりじゃないか」
「そうだよ。それがいけないのか?」
村の人は、ふしぎそうにたずねました。
するときっちょむさんは、どうしようもないように、
「いけないのなんのって、しいの木は『かなしい』といって、とってもえんぎがわるい木だもの。おまけに、いまはお正月じゃないか。こんなめでたいときに、なんだって、『かなしい』木をたくさん家へもって帰るんだろうね」
「へえ、それはしらなかった。なるほど、めでたいお正月に『かなしい』木なんぞもって帰ったら、女房や子どもがかわいそうだな」
村の人たちは、顔をみあわせました。
せっかくつくったたきぎが、『かなしい』ではしかたがありません。
みんなはせなかのたきぎを、ポンポンとそこらへほうりだして、またべつの木を切りはじめました。
「へっへっへ。しめしめ」
きっちょむさんは、みんながほうりだしたたきぎをあつめて、山ほどせなかにせおうと、
「それじゃ、みなさん。お先に帰らしてもらいますよ」
と、ひとりでさっさと帰ろうとしました。
村の人はビックリして、
「おいおい、きっちょむさん。おまえ、そのたきぎは『かなしい』といって、たいへんえんぎがわるいって、いったじゃないか」
「そうだよ。そんなもんをかついで、ひとりでどこへいくんだ」
と、口ぐちにたずねました。
すると、きっちょむさんはすました顔で、
「いやいや、この木はな、少しちがうんだよ。これは『うれしい』といってな、とってもえんぎがいいものなんだ。まして、いまはお正月じゃないか。こんなえんぎのいいことがあるもんか」
と、いって、さっさと帰ってしまいました。
おしまい
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