きょうの百物語
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11月9日の百物語

ともかづき
イラスト 「夢宮 愛」  運営サイト 「夢見る小さな部屋」

ともかづき
三重県の民話三重県情報

 むかしむかし、伊勢の海辺の村に、みよという娘の海女がいました。

ともかづき

 この伊勢の海には、『ともかづき』と呼ばれるお化けがいて、海女たちから恐れられていました。
 そこでみよが海女になったばかりの時、先輩の海女たちからこう教えられたのです。

ともかづき

「いいかい、みよちゃん。
 ともかづきは、あたしたちと同じ海女の姿で現れて、
『アワビを、あげよう』
と、言うけど、それを手で受け取ってはいけないよ。
 手で受け取ると、ともかづきに手首をつかまれて、海の底に引きずり込まれてしまうからね。

ともかづき

 どうしてもそのアワビが欲しい時は背中を向けて、背中にはりつけてもらうんだよ」
「はい」
 みよは先輩海女の教えを守って、ともかづきに会わない様に気をつけていました。

 ある年の秋の事、しけが続いて、もう七日も海に潜れません。

ともかづき

「困ったわ。このままでは、ご飯を買うお金がなくなってしまう」

ともかづき

 そこでみよは家族が止めるのも聞かずに、しけのおさまりきらない海へと小舟を出したのです。

ともかづき

 しかしいくら海に潜っても、アワビもサザエも見つかりません。

ともかづき

「駄目だわ。もっと別の場所に行かない」
 そこでいつもと違う場所へ潜っていくと、海草の間から、おばあさんの海女が大きなアワビをかかえて現れました。
 そしてみよに、こう言いました。

ともかづき

「おや、こんな日に潜るなんて、えらい娘さんだね。さあ、このアワビをあげるから、遠慮しないで持っておゆき」

ともかづき

(まあ、なんて親切な海女さんだろう)

ともかづき

 みよは喜んで、そのアワビを手で受け取りました。

ともかづき

 そのとたん、おばあさんはニヤリと笑って、みよの手首を力一杯つかみました。

ともかづき

「ああ、やっと身代わりが来た。これで成仏できるよ」
 そしておばあさんは、みよを海の底へと引っ張ったのです。

ともかづき

(あーっ、しまった! ともかづきだ!)

ともかづき

 みよは必死でもがきましたが、そのまま海の底へと沈んでしまいました。

 ともかづきは海で死んだ海女の幽霊で、自分の身代わりになる海女を作らないと、いつまでも成仏できないと言われています。

ともかづき

 そして今でもこの海では、死んでともかづきになったみよが、自分の身代わりになる海女が来るのを待っているそうです。

おしまい

イラストレーターの夢宮 愛さんが、その後のお話しを描いています。
お気軽に、お立ち寄りください。

→ その後の『ともかづき』

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