6月28日の小話
急病
夜おそくなって医者の家に、伊勢屋(いせや→節約家で有名な、江戸の大商人)のこぞうが走ってきました。
「おくさまが、きゅうにたおれました。いそいで、ねがいします」
医者はあわてて、ばたばたといそぎ足で、伊勢屋につきますと、伊勢屋はもう、上を下への大さわぎ。
医者は、その中へとびこむと、いきなり女中の手を取って、脈をみはじめました。
女中はあわてて、
「あれぇ、病人は、わたしではござりませぬ」
と、いうと、医者は、
「このように一刻を争うときに、だれのかれのといっておれぬわ」
こういう医者を、やぶ医者と申します。
おしまい
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