きょうの江戸小話
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11月19日の小話

おこる男

おこる男

 あるとき、まぬけな太郎吉(たろうきち)が、
「うちのとなりの八兵衛(はちべえ)は、『めったに腹を立てたりしない、がまん強い男だ』と、みんながいっているようだが、あれはうそじゃ」
と、いうので、相手の男が、
「いやいや、あの男はな、なかなかがまん強い男でな、そうかんたんにおこったりはしない、気のやさしい男さ」
と、いうと、まぬけな太郎吉は、大まじめな顔をして、
「でも、きのう、八兵衛がひるねをしていたので、ほんとうにおこったりしない、がまん強い男かどうかをためすには、ちょうどよい機会だとおもったので、ほんの米つぶほどの、小さな炭火のかけらを耳の中におとしてみたら、目の色を変えておこりだしたぞ。うわさとはちがって、あの男はおこりっぽい男だ」
「そら、だれでもおこるわ」

おしまい

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