11月19日の日本の昔話
イラスト たつよ
くわん、くわん
一休さんのとんち話 → 一休さんについて
むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
ある時、和尚(おしょう)さんが大好きなぼたもちをもらってきましたが、寺の小僧たちにわけるだけの数はありません。
そこで和尚さんは小僧たちにはやらずに、一人で全部食べてしまおうと、そのぼたもちを戸だなの奥に隠したのですが、それを見ていたのが一休さんです。
「ずるい和尚さんだ。よし、みんなで食べてしまおう」
と、隠していたぼたもちを取り出すと、寺の小僧たちと一緒に全部食べてしまったのです。
「しかし、こんな事をして大丈夫か? 一休」
心配する小僧たちに、一休さんはニッコリ笑うと、
「大丈夫ですよ。本堂の阿弥陀(あみだ)さまに、ちょっと手伝ってもらえば」
と、言って、皿についたアンコを手ですくうと、一休さんは本堂に入って行きました。
さて次の朝、ぼたもちがなくなった事に気がついた和尚さんはカンカンに腹を立てて、一休さんたち小僧を呼びつけました。
「こら! 戸だなの奥のぼたもちを盗んだのは、誰だ?!」
すると一休さんは、とぼけた口調で、
「はて、わたしたちは知りません。
だけど本堂の阿弥陀さまの口元に、アンコがついていましたよ。
犯人は、阿弥陀さまかもしれませんね」
「なにを、ばかな事を」
と、言いつつ、和尚さんが本堂に行ってみると、たしかに阿弥陀さまの口元はアンコだらけです。
もちろん、一休さんの仕業(しわざ)です。
(ははーん。
これは、一休の仕業だな。
またとんちでごまかすつもりだろうが、そうはいかんぞ)
一休さんの仕業と気づいた和尚さんは、
「阿弥陀さま。
ぼたもちを盗んだのは、阿弥陀さまですか?
答えてくだされ」
と、言って、阿弥陀さまの頭をコツンとたたきました。
すると、阿弥陀さまが、
♪くわ〜〜ん
と、鳴りました。
何度たたいても、
♪くわ〜〜ん、♪くわ〜〜ん
と、鳴ります。
和尚さんは一休さんたちに向き直ると、怖い顔で言いました。
「ほれみろ。
阿弥陀さまは、『食わん』とおっしゃっておるぞ。
やはり犯人は、お前たちだな!」
和尚さんは、
(ついに一休から、一本とったぞ)
と、内心喜んでいましたが、そんな事でやられる一休さんではありません。
一休さんは、ますますとぼけた口調で、
「あれ?
たたいたくらいでは、白状(はくじょう)しませんね。
こうなれば、阿弥陀さまをかまゆでにしてみましょう」
と、言って、煮えたったかまの中に、阿弥陀さまをつけたのです。
すると阿弥陀さまは、
♪くった、くった、くった
と、あわをふきました。
「ほらね。あみださまが『食った、食った』と、白状したでしょ」
これには、和尚さんも返す言葉がなく、
「確かに、お前の言う通りだ」
と、答えるしかありませんでした。
おしまい
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