きょうの江戸小話
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11月25日の小話

よく見るがいい

よく見るがいい

 長い間わずらっていた父親の病気が、どんどんと悪くなってきました。
(親父さまも、今度は、いよいよ、おだぶつ(死ぬこと)らしいぞ)
 バカむすこの三吉(さんきち)が、ひとりごとをいいながら、表に、忌中札(もちゅうふだ→死人が出た時に、玄関口にはる札)をはりだしました。
 病気おみまいにやって来た親せきの人が、びっくりして、
「バカなことをするではない! まだ死んでもいないのに、忌中札などはりだすやつがあるか! すぐにひっぱがせ!」
と、どなりつけました。
 すると、三吉が、ニヤニヤしながら、
「そんなにおこらないで、もっとよく見ておくれ」
と、言い返すので、もう一度、表に出てよく見ますと、"忌中"という字の上の方に、小さく「近いうちに」と書いてありました。

おしまい

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