1月17日の日本民話
与作のうらない
香川県の民話
むかしむかし、あるところに、与作(よさく)というお百姓さんがいました。
とても働き者で、毎日朝早くから夜おそくまで畑仕事をしていました。
ところが与作さんのおかみさんときたら、ひどいなまけ者で、しかも大めし食いです。
そのくせ、与作さんの前では少ししかごはんを食べません。
(しかし、あんまりごはんを食べないのに、どうしてふとっているのかな?)
不思議に思った与作は、ある日、畑へ行くふりをして天井にかくれました。
すると、どうでしょう。
おかみさんはごはんをたいて、にぎりめしをいくつもつくりました。
(なんて数だ。あんなににぎりめしをつくって、どうするつもりだ?)
と、見ていると、つくったばかりのにぎりめしをパクパク食べて、残りをカゴに入れて、かまどの後ろへかくしたのです。
(なるほど、ああやってひまさえあれば、にぎりめしを食べているんだな)
そこで与作は天井からおりて、なにくわぬ顔で表から家に入りました。
「えっ、まあまあ、今日はどうしたの? ばかに帰りが早いじゃないの」
おかみさんが、おどろいて言いました。
「おら、今日はうらないをならってきた」
「へえ、うらないをね。そんなら、なにかうらなっておくれよ」
すると与作は両手を組んで、目をつぶって言いました。
「うむ。にぎりめしが見える。・・・ふむふむ、かまどの後ろだ。かまどの後ろににぎりめしがかくしてあるぞ」
「まあ、すごい!」
おかみさんは自分のことを言われているのに、すっかり感心してしまいました。
そしてすぐに家を飛び出して、この事を村のみんなにいいふらしたのです。
さて、与作の近所に、おばあさんとお嫁さんのなかの悪い家がありました。
ある日の事、お嫁さんはおばあさんがにくくて、おばあさんの大切なカガミを古井戸のつるべの中にかくしてしまいました。
そして、与作のうわさを聞いたおばあさんがやって来ました。
「与作さん、わしのカガミがなくなったんよ。どこにあるのかうらなっておくれ」
そんな事を言われたって、与作にわかるはずがありません。
そこでしかたなく、
「今日はもうおそい。明日になったら、うらなってあげよう」
と、言って、おばあさんを帰しました。
すると間もなく、お嫁さんがやって来ました。
「与作さんはうらないの名人なので、もう知っていると思いますが、じつはわたしが、古井戸のつるべの中にかくしました。その事がわかれば、おばあさんに追い出されてしまいます。どうか、おばあさんにはわたしがかくしたと言わないでください」
「おおっ、そうかい、そうかい。それを聞いて助かった。・・・いや、よくぞ言ってくれた。もしお前さんが白状(はくじょう)しなければ、わしはおばあさんに全てを話していたところだ。約束しよう、この事は決して話しはしないから」
「あっ、ありがとうございます」
次の日、与作はおばあさんに言いました。
「実はな、カガミは古井戸のつるべの中にある。子どもが、イタズラをしてかくしたのだ」
おばあさんが古井戸のつるべをあげてみると、本当にカガミがありました。
「あれまあ。なんてよくあたるうらないだろう」
おばあさんは、この事を村中にふれて歩きました。
与作さんのうわさはたちまち広がり、ついに殿さまの耳にまで聞こえました。
ちょうど大切な刀が見つからなくなり、こまっていた殿さまは、すぐに与作のところへ使いをやり、
「刀のゆくえをうらないに来い」
と、言ったのです。
「こいつは弱った。いまさら、うらないは出来ないとは言えないし・・・」
それでもかくごを決めて、殿さまの屋敷へ出かけていきました。
すると途中の森で、二匹のキツネがけんかをしていました。
「あの刀は、おれがぬすんだものだぞ」
「だが、ぬすんだのはお前でも、屋敷の庭にかくしたのはおれだ」
与作さんはそれを聞くと、飛び上がって喜びました。
そこで殿さまの前に行くと、与作は両手を組んで、目をつむって言いました。
「むむっ、むむむっ。・・・はい、わかった。刀は、屋敷の庭にあります」
殿さまがけらいに調べさせると、庭石の間から、なくなった刀が出て来たのです。
「これは見事。お前は日本一のうらない名人だ」
殿さまは大喜びで、与作にたくさんのほうびをあげたという事です。
おしまい
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