2月14日の日本民話
お銀と小金物語
石川県の民話
むかしむかし、金沢(かなざわ)に、お銀(おぎん)と小金(こきん)という仲のよい姉妹がいました。
でも、その姉妹は腹ちがいで、それぞれ産んでくれたお母さんがちがいます。
お銀の母親はお銀が小さい頃に死んでしまい、小金の母親はお銀の父親と結婚してから、小金を生んだのです。
だから母親は、お銀には冷たくあたります。
お銀が不幸になっても、小金が幸せならいいと思っていました。
ある日の事、お銀の父親が仕事で江戸(えど→東京都)にいくことになりました。
母親はいいチャンスだと思い、お銀を山へつれていって殺してやろうと思ったのです。
そうとは知らない、お銀も小金も、
「わあ、きれいなお花だこと」
と、いいながら、どんどんどんどん山奥へ入って行きました。
母親はお銀に気づかれないように、小金だけをつれて家へ帰ってしまいました。
お銀がふと気がつくと、小金も母親もみあたりません。
お銀は涙声で、
「かあさま! 小金ちゃん!」
と、よびながら帰り道をさがしました。
家では小金が、お銀のことを心配しています。
「お銀ちゃん、無事で帰ってきてね」
と、いのるような気持で待っていました。
その日の夜遅く、泥だらけのお銀が帰ってきました。
小金は、とびつかんばかりに喜び、
「よかったわ、よかったわ」
と、いいながら心の中で、
(ごめんね。こんなかあさまを許してやってね)
と、あやまるのでした。
ところが、母親はくやしそうな顔で、
「おやまあ、ずいぶんと遅かったねえ」
と、いっただけで、また次の方法を考えていました。
数日後のある日、母親はまたお銀を殺そうと、下男(げなん)に犀川(さいがわ)の岸辺に大きな穴をほらせました。
そして、いやがるお銀をひっぱっていって、いきなり穴の中に突き落したのです。
「今度こそ、お前も終わりだよ!」
母親はそう言うと、さっさと帰ってしまいました。
この様子を見ていた小金は、その穴に近づいて、
「お銀ちゃん!」
と、よびました。
すると、
「小金ちゃん助けて! 水が入ってくるの。どんどん深くなってくるの」
と、お銀の声がします。
でも、子どもの小金にはどうすることもできません。
しばらくして、お銀の声はまったく聞こえなくなってしまいました。
「お銀ちゃん! お銀ちゃん! かあさまを許してあげてね。わたしもお銀ちゃんのそばへいくから」
と、いうと、深い穴の中に小金も身を沈めてしまいました。
今でも法年寺(ほうねんじ)には、二人のお墓があるという事です。
おしまい
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