5月21日の日本民話
大力権兵衛
長野県の民話
むかしむかし、神谷(かみや)に権兵衛(ごんべえ)という力持ちがいました。
権兵衛は力が強いだけでなく、そばの大食いでも評判でした。
何しろ二升のそば粉で作ったそばを、ペロリと食べてしまうのです
ところがちょうど同じ頃、薮原(やぶはら)にも、
「そば食いでは、誰にも負けねえぞ」
と、いばっている坊さんがいました。
あるとき、この二人がそば屋で顔を合わせて、さっそくそばの大食い勝負をすることになったのです。
さすがに二人とも、ものすごい大食いで、なかなか勝負がつきません。
そしてそば屋のそばが全部なくなってしまい、勝負は引き分けになってしまいました。
ところがそのとき、坊さん急に腹かかえて苦しみ出して、その日の晩に死んでしまいました。
それを聞いた権兵衛はびっくりして、
「なんて申し訳ねえことを。おれのために、坊さんが一人死んでしまった」
権兵衛は泣く泣く坊さんの弔いをすませたものの、どうにも気持ちがおさまりません。
そこで罪ほろぼしに、何か村のためにすることはないかと考えました。
そして、こんなことを思いついたのです。
「木曽(きそ)の山中は、田んぼが少なくて米がとれねえ。だから山中に道を開いて、伊那(いな)と行き来できるようにしよう」
こうして、権兵衛の道づくりが始まりました。
権兵衛は毎日、山で木を倒して岩を堀り出すと、土をならしました。
それを何ヶ月も続けて、やっとのことで権兵衛は木曽から伊那に通じる道をつくったのです。
そして自分で牛を引きながら木曽の木を伊那へ運んだり、また伊那からは米を運んだりして村のためにつくしたのです。
このとき権兵衛が切り開いた道は『権兵衛街道』といい、またその途中にある峠は、『権兵衛峠』と呼ばれるよう になりました。
今でも、『権兵衛街道』と『権兵衛峠』は残っているのです。
おしまい
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